「ガントレット」 監督 クリント・イーストウッド  キャスト ソンドラ・ロック  FFビデオ制作

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ガントレット枠.jpg警察上司の立場がまずくなる裁判の証人を護送するはみだし刑事(でか)の活躍を描くアクション映画。製作はロバート・デイリー、監督は「アウトロー」のクリント・イーストウッド、脚本はマイケル・バトラーとデニス・シュラック、撮影はレックスフォード・メッツ、音楽はジェリー・フィールディングが各々担当。出演はクリント・イーストウッド、ソンドラ・ロック、パット・ヒングル、ウィリアム・プリンス、マイケル・カバナーなど。

この映画の主張は「許されざるもの」に似ています。法律の番人であるはずの警察署長がギャングと裏でつながっています。自分の悪事が露見しないようにするために証人を殺害しようとします。

どうもこの世には法の番人であるはずの組織の幹部が悪事を働いている事例が少なくないようです。また、それを退治しようとする真面目な警察官がいることも感じさせます。組織体の幹部になるとどうしても恩のある人から頼まれると筋の通らないことでもやらざるを得なくなったり、保身を図るために部下を飛ばしたりすることはままあることだと思います。

選挙で選出される政治家の人たちは民主主義の象徴ですが、選挙に金を出してくれるスポンサー、票を取りまとめてくれる組織の幹部から何かを頼まれたら断れるのでしょうか。大恩ある人から頼まれたら断れないでしょうね。手足となることを前提の選挙応援もあるでしょうし。一般的に政治家はスポンサーの利益のために動かざるを得ません。これは別に悪いことではなく選挙を基本に据える民主主義の仕組みそのものの弱点でしょうね。警察がスポンサーを追究しようとしても、政治家が止めざるを得ない。これも民主主義の弱点でしょうね。それを黙認してもまだ民主主義のメリットが大きいのだと思います。

選挙で選出される行政組織、立法組織体のメンバーは全て多かれ少なかれ弱点を抱えているというわけですね。中には弱点のない人もみえるでしょう。ほとんどの人は小さな弱点でしょうが、上層部の組織ほど、幹部ほど弱点が大きくなり、巨大なスポンサーが裏で糸を引いている事は周知のことですから私たちも温かく見守る目が必要なのかもしれません。世界の政治の面においては国内より経済が大きい分弱点が大きくなっているようですけど。

この世に清廉潔白の組織体などあるわけがなく、民主主義は弱点を抱えながらも大きなメリットを生み出している統治の仕組みなんでしょう。そういう目で見ることも必要だと思います。

例えると、民主主義国家とはインターネット接続国家で、専制君主制、一党独裁制はインターネットに接続しないオフライン国家と考えるとわかりやすくなります。インターネット接続国家はあらゆる自由がありますが、外部から密かにウイルスが入り込みます。ウイルスは接続するコンピューターを自在にコントロールできます。しかし、オフラインコンピューターは、通信ではなくUSBメモリなどの媒体を通したウイルス混入しかできません。すると外部からのコントロールリスクがほとんどなくなります。どうでしょう、今の自由主義国家に近いとは思いませんか。だから先進国は自由主義国家を増やしていきます。自由主義化すると国民の恩恵も大きなものが有りますし、ウイルスも混入できますから双方の国家にメリットがありますね。そう、多少ウイルスリスクがあってもいまさらインターネットはやめられませんから、ウイルス対策を万全にして侵入経路を可能な限り遮断していくことが大切だと思います。その経路遮断の手段は秘密を全部暴露できる「報道の自由」を守ることではないかと思うのです。

組織体の幹部は将来自分の立場を脅かすものは排除します。みんな組織体の目的達成よりも自分の利益の方が大切ですから。しかし、最後には退治される。その辺をうまく表現していると思います。  

クリント・イーストウッドの映画はどうも巨大な悪が存在しているということを伝えようとしているような気がします。そしてそれを映画の上で退治していく。観客は正義感を記憶にとどめます。そしていつか退治する側になってほしいという願い。こんな映画が何度も繰り返されるのは、このような悪がどこかの公の組織の幹部に存在しているということでしょうね。余りに強大過ぎて直接描けないから間接的に描いて正義感の維持を目的にしている。そんな気にさせますね。

だから全ての脚本は「悪は報われてはならない」を基本に据えています。それが弱点を持つ民主主義を補正していく唯一の方法ですから。民主主義を健全に保つためには正義の筋を通すストーリー、秘密の暴露が必要だと思います。弱点は必ず機密扱いになりますが、その機密がどんどんマスコミなどによって暴露されたらどうでしょう。弱点となる機密を無くすしかなくなりますね。その結果民主主義の弱点は減っていく。そう考えると儲かれば何でも報道するとしても報道の自由は実に大切なことだとわかります。ウィキリークスだって考えようによっては世界平和にとって重要な機能なのかもしれません。民主主義の弱点を補う機能として。

プロポーズの言葉は言わないで、相手の前で自分の母親に今度結婚すると電話します。こんなプロポーズもありですね。相手も断りにくいのかも。

二人が逃げていく中でいろんな困難に会います。お互いが相手のために身体を投げだした時、二人の間には愛が芽生えたという演出ですね。自分たちの人生の中でも身体を投げ出さないまでも、お互いに相手のために行動することで気持ちが通じ合うということですね。

正義と悪が明確な映画で、色々深読みさせてくれる素晴らしい映画でした。

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