2013年12月アーカイブ

羅生門のコピー_edited-1.jpg枠jpg

概要

原作は芥川龍之介の短編小説「藪の中」だが、「羅生門」にも題材を求める。

本作は、「対立する複数の視点から同じ出来事を4人が違う様に回想する」ことを描く、法廷心理劇手法。これはアメリカや中国など外国の映画やフィクションに影響を与えている。

登場する3人及びそれを見ていた1人の4人が同じ場面を自分に都合のいいように証言することを通して自分勝手な人間の本性を描き出している。

本作は1951年(昭和26年)9月、ヴェネチィア国際映画祭でグランプリを受賞し、日本の映画が世界に紹介されるきっかけとなった。

本作の完成時、世間の評価もぱっとせず、大映社長の永田雅一も、「この映画はわけがわからん」と批判していた。しかし本作がヴェネツィア国際映画祭に出品されてグランプリを受賞すると、永田社長は一転してこれを自分の手柄のように語った。黒澤監督は後年このことを回想し、「まるで『羅生門』の映画そのものだ」と評している。

平安時代、荒れ果てた都の大雨の羅生門で、杣売り(キコリ)と旅法師が放心状態で座り込んでいた。そこへ下人がやって来る。下人は退屈しのぎに、2人から検非違使の白砂で聞いたある事件の話を聞く。

ある日、杣売りが山に薪を取りに行くと、武士・金沢武弘の死体を発見した。そのそばには、「市女笠」、踏みにじられた「侍烏帽子」、切られた「縄」、そして「赤地織の守袋」が落ちており、またそこにあるはずの金沢の「太刀」と妻の「短刀」がなくなっていた。杣売りは検非違使に届け出た。旅法師が検非違使に呼び出され、死体の武士が妻・真砂と一緒に旅をしているところを見たと証言。

やがて、下手人として、盗賊の多襄丸が連行されてくる。多襄丸は女を奪うため、武士を木に縛りつけ、女を手籠めにしたが、女が「生き残った方の妻となる」と言ったため、武士と多譲丸が決闘し多譲丸が勝った。しかし、その間に女は逃げてしまったと証言した。無くなっている短刀の行方は知らないという。

しばらくして、武士の妻が検非違使に連れて来られた。妻は自分を手籠めにした後、多襄丸は夫を殺さずに逃亡したという。だが、眼前で他の男に抱かれた自分を見る夫の目は軽蔑に染まっており、妻は思わず自分を殺すよう訴えた。あまりのつらさに意識を失い、しばらくして目を覚ましたときには、夫には短刀が刺さって死んでいた。自分は後を追って入水自殺して死のうとしたが死ねなかった、と証言した。

そして、死んだ武士の夫の証言を得るため、死者を呼び出す巫女が呼ばれる。巫女を通じて夫の霊は、妻は多襄丸に手籠めにされた後、多襄丸に情を移し、自らの夫を殺すように彼に言ったのだと言う。そして、これをきいた多襄丸は激昂し、妻を生かすか殺すか夫が決めていいと言ってきたのだという。しかし、それを聞いた妻は逃亡した。多襄丸も姿を消し、一人残された自分は無念のあまり、妻の短刀で自害したと証言した。

だが、杣売りは、下人に「3人とも嘘をついている」と言う。杣売りは実は事件を目撃していた。そして、杣売りが下人に語る事件の当事者たちの姿はあまりにも話と違い、あさはかなものであった。無くなった短刀は杣売りが盗んでいた。そして、4人とも自分に都合のいい話をでっちあげていたことが明らかになり、人間の自分勝手な浅ましい姿が浮かび上がるが、杣売りは最後に可哀そうな捨て子を自分が引き取って育てると言う良心を見せる。自分に都合のいい話をでっちあげる人間を見て人間不信に陥っていた旅法師はこれで人を信じることができると言う。

予告編 http://www.youtube.com/watch?v=MJDeh7uod3M

本編 http://www.youtube.com/watch?v=Ygl5sfKZ3I8

 

映画分析感想

どうしてこの映画は日本では評価が低く、海外で高かったのか?

その原因の一つはキャストの台詞のうち聞き取れない個所があちらこちらにあること。妻の台詞のあの人を殺してくださいと連呼する前後の台詞は少し早口で声が小さい部分があり聞き取れない部分があった。

羅生門でのやり取りも雨の音が大きく台詞の聞き取れないところがある。

このように複雑なストーリー展開の映画では、一部でも台詞が聞き取れないと観客がストーリーについていけなくなる。ひとつひとつのの台詞が意味を持っているから。観客は内容の理解を諦めてしまう。

二回三回と聞き直さないと分からないところもあった。

大声の多譲丸の台詞でさえ早口の部分は聞き取れないところがあった。

これでは日本人は正しく意味をつかめない。

しかし、外国で上映する場合は台詞が全部テロップで流れる。つまり台詞が全部きちんと伝わる。だから一度見ただけでその意味がつかめる。台詞が全部きちんと聞き取れないのなら、テロップ付けるかと言うとそうもいかない。だから脚本が台詞を多用している以上台詞が全部伝わるのが前提の作品だと思う。

つまり、映画のキャストは滑舌が重要、台詞は早口ではなくきちんと発音して伝える演出をすることだと思う。舞台のように。台詞が観客に正しく伝わらないのは演出、編集に問題がある。私も既に2回見ているが、今回細かく分析するまで本当の内容は分からなかった。恐らく多くの日本人が作品の内容まで十分に理解できない場合、その原因は前記の台詞の聞き取りにくさに影響されている可能性がある。

台詞は450位で多くはない。沈黙のシーンもある。

小津監督も黒澤監督も両方とも脚本に人間の本性を描いて丁寧に演出。そして、人間としてのあるべき姿を考えさせる作品である。両方とも世界トップの評価。映像のアングルについては黒澤監督の方が超クローズアップも使用しており、ハリウッドを意識。雨やクローズアップ、カメラがキャストと並行して動いている。映像にスピード感がある。小津監督は我が道を行く舞台三層構造、ローアングル撮影。どちらの巨匠の作品も素晴らしい。

――――――――――――――――――――――

いい台詞

キコリ、嘘だ、みんな嘘だ。

下人、へへへ、本当のことを言えないのが人間だ。

法師、そうかもしれん、しかし、人間は弱いからそうなんだ、弱いからこそ偽る、それさえ偽る。

下人、尤も女と言うやつは何でも涙でごまかしてくる。自分自身までごまかそうとしている。だから女の話はよほど用心してかからないとあぶねえぞ。

下人、一体正しい人間なんているのかい、皆自分でそう思っているだけじゃないか。

下人、人間と言うのは自分に都合の悪いことは忘れちまう。都合のいい嘘を本当だと思ってるんだ。その方が楽だからな。

下人、こんな話は世の中にはざらにあるよ。この羅生門に住んでいた鬼が人間の恐ろしさに逃げ出したという話さえあるこの頃だ。

妻、覚えておくがいい、女は何もかも忘れてキチガイみたいになる男のものなんだ。女は腰の太刀にかけて自分のものにするものなんだ。

多譲丸、未練がましく女をいじめるな。女と言うものは所詮このようにたわいのないものなのだ。あははは。妻、他愛のないのはお前たちだ。夫だったら何故この男を殺さない。私に死ねと言う前に何故この男を殺さないのだ。この男を殺したうえで私に死ねと言うのが男じゃないか。お前も男ではない。あははは。

このどうにもならない立場から私を助けだしてくれるなら、どんな無茶な無謀なことだって構わないそう思ったんだ。

下人、嘘だと言って嘘を言えるやつはいねえからな。

下人、どうもこうもねえ、人間の都合なんて全くわからないという話しさ。

下人、手前勝手がなぜ悪い。人間が犬を羨ましがっている世の中だ。手前勝手でない奴が生きていける世の中じゃねえ。

杣売り、(捨て子を見て)

わしのところには子供が6人いる。しかし、6人育てるのも7人育てるのも同じ苦労だ。

法師、お主のお陰でわしは人を信じていくことができそうだ。

この映画は人間の自分勝手な本性を描いており、ラストでは人間の良心で救われる。永遠に高く評価される芸術作品であると思う。

 

監督の作り込みチェックリスト 監督 黒澤明

区分

NO

項目

内容

脚本

1

タイトル

羅生門

2

主題

(何についての映画か、問題、主張する思想内容)

人間の本質は善なる良心

3

テーマ

(主題についての考え方、メッセージ、見解)

人は手前勝手でないと生きていけないもの。

人には死んでも嘘をついて隠したい罪がある。

人が信じられなくなったらこの世は地獄。

人間の良心こそ最後には勝利する。

 

脚本

法廷心理劇構造(羅生門及び検非違使のお白砂の証言者の回想でシーンが切り替わる。法廷は羅生門と検非違使のお白砂の二階層構造)

4

場所

京都

5

時代

平安時代

6

季節

7

期間

3日間

8

モチーフ

(反復で表す)

分かんねえ。6回

恐ろしい話だ。3回

あの人を殺してください。5回

やめて。6回

わしは嘘は言わねえ。3回

9

隠喩

(別のもので意味を伝える)

多譲丸が妻の口を吸うシーン、カメラは空がぐるぐる回り妻のめくるめき快楽の心情演出、そして妻は目をつむり短刀を落として多譲丸への敵対を止めた演出、次に妻の右手は多譲丸の背中にしがみ付いて気が多譲丸に移った演出。

ビジュアルデザイン

10

照明

(キーライト、フィルライト、バックライト)

検非違使のお白砂でのシーン、取り調べられている者の顔は日陰、後ろで待機するものは日光が当たっている。

取り調べられている者の顔の陰のコントロールが可能にしてある。

武士が多譲丸に財宝の隠し場所を案内させるシーン、武士の顔に木の葉の陰、半信半疑を演出。

武士を縛り付けて取って返して妻を覗き見る多譲丸の顔に二本の木の枝の横陰がはいり、陰謀を演出。

夫が縛られている姿を見る妻の顔と身体に木の葉の陰で心細い心情演出。

夫は多譲丸に捕まった妻を見るシーン、顔半分に陰を落として辛い心情演出。

夫が多譲丸に手籠めにされた妻を蔑むシーン、夫の顔に木の葉の陰で突き放す心情演出。

多譲丸が夫に妻を殺すか、助けるかというシーン。夫は縛られたまま引きのショット、30パーセント接近したショット、このショットでは顔に木の葉の影がないのに、次のクローズアップでは顔に木の葉の影がある。これは顔の少し上に木の葉を置いて撮影したと言うが、手前のシーンでは影がないのに突然影が現れるのはおかしい。手前のショットをカットするかショットごとの繋がりを見直すべきだったと思われる。

11

色使い

(コントラスト、配色)

12

主役の色

(どのように目立たせているか)

多譲丸は裸に近い。武士はサムライの装束、妻は京女の服装で三者明確に分かれている。

羅生門で話をしている三人はぼろぼろの服装。

13

カラー白黒

モノクロ

撮影

14

フレーム

(スタンダードサイズ、ワイドスクリーン、シネスコープ)

スタンダードサイズ

15

配置

カメラからみてキャストが重ならないように配置。近景、中景、遠景にキャストを配置して会話しているものと待機しているものを区別。

16

オフスクリーン

(スクリーンの外を描く)

検非違使のお白砂で取り調べを受けるが検非違使は完全なオフスクリーンで人影もセリフも何もないが、検非違使のお白砂が成立している。お見事。

えっ、女の太刀?

なにっ、女の短刀?

このように検非違使に対して言葉を繰り返して検非違使がいなくても存在しているよう演出している。

17

カメラワーク

(ロング、フル、ミディアム、ウエスト、クローズアップ、超クローズアップ)

キコリが山を歩くシーン、カメラがキコリの前、後ろについて同じ速さで移動する。天空を映すシーン、空が回るシーンなど、カメラアングルは相当工夫されている。

多譲丸が妻を引っ張って山を走るシーン、すごい速さ、カメラもキャストと移動する。編集で速度をあげていると思う。

ラストの羅生門のシーンで、引き、少し引き、フルショット、クローズアップを使用しているシーンあり。

同じ年代なのに、小津監督の東京物語はクローズアップは使用していなかったが、黒澤監督はクローズアップ、超クローズアップを使用、黒澤監督はアングルとショットを相当工夫している。

18

アングル

引きのショットでは殆ど近景、中景、遠景の構図になっている。舞台のZ軸、奥行きを大切にしている。これは現代のコマーシャルに顕著である。平面の画面に奥行きを持たせることが観客に印象を残すからである。

森の中で木の葉が揺れて風と心情を演出。霊媒師が祈り踊りながら衣裳が風にたなびいて、死者の声を呼び出す演出。

19

主観ショット

(本人目線)

はじめて出会う武士と多譲丸はお互いに主観ショット。

20

スローモーション

ない。

編集

21

スーパーインポーズ

(別の映像を重ねる)

シーンの画面切り替えがディゾルブではなくて左から右に画面切り替え、次は左から右、その次は右から左、これは観客を混乱させる目的?

22

リアクションシカット

(加害者、被害者)

多譲丸と夫の戦いシーン、多譲丸と妻のシーン。

23

ディテールカット

(目や手)

妻が多譲丸に夫を殺してくださいと言うシーン、妻の目の超クローズアップ。

24

カットアウエイ

(別のカットを挟む) 羅生門での三人の話の場面と検非違使のお白砂の場面および山中でのでき事が説明者の話内容に添って切り替わる。

25

カットバック

(全く別の状況に交互に切り替える)

羅生門と検非違使のお白砂で取り調べられている人がそれぞれシーン単位にカットバック。

26

モンタージュ

(裏の人格を見せるなど)

27

カラコレ

 

音響効果

28

効果音

各シーンの環境音を変えている。

霊媒師が死人を呼び出して話すシーンは念仏のような神道の祈りようなBGM。

スタートとラストシーンは同じ雅楽のBGM。

大雨の雨音。これはハリウッド映画があまり雨を使用しないからという配慮があるらしい。7人の侍も雨降りの泥沼シーン。照明の使い方もハリウッドを意識しているらしい。

ラストでは捨て子の泣き声が羅生門に響く。

29

沈黙

妻が夫の縄を切って、多譲丸と妻と夫が直線に並んで三すくみのようになるシーン。多譲丸のクローズアップ、夫を見る妻のクローズアップ、多譲丸を見る妻のクローズアップ、三人がにらみ合う。50秒間沈黙。

きゃーと言う妻の悲鳴、その後のぶざまな多譲丸と夫の戦い3分間台詞なし。映像だけで戦いを見せている。

この点は小津監督とは違う。

多譲丸が林の中を走るシーンのBGMはアップテンポ。

音楽に合わせてキャストが踊る、演じるという基本通り。

30

モンタージュ

(音と音、並列繋ぎ、対比繋ぎ)

31

サウンドミックス

(音の重ね方)

羅生門の雨音と台詞、台詞のシーンは雨音を押さえているが、台詞そのものを確認できない部分がある。

32

モチーフ

(同じ音の繰り返し)

感想

33

 

前掲

東京物語1.jpg

概要

年老いた両親の東京旅行を通じて、家族の絆、夫婦と子供、老いと死、人間の一生、それらを冷徹な視線で描いた作品。

長男の嫁の文子は母親に対して孫の前ではおばあちゃん、いないときはお母さんと使い分けている。

血の繋がる実の子供よりも、繋がりのない二男の嫁の方が遥かに優しく親孝行という対比が大きな葛藤も作らずに丁寧に描かれていて胸を打つ。この映画を見ると親孝行を実践したくなる。

この映画は台詞が多く約1500もある。しゃべりっぱなしである。これは同居している家族ではなく、尾道から東京見物に出てきた普段会話のない両親とのコミュニケーションのために多くなっていると思われる。そうしないと意思疎通ができないから。そして、家族と人生の彩模様を丁寧に台詞で伝えている。

初めに尾道の隣のおばさんが東京では皆さんお待ちかねで、今日お立ちですか、立派な息子さんや娘さんがいてお幸せでと言われて物語が始まる。

東京では表向き歓迎されるものの、家族のきずなが薄い現実に出あい泊まるところもなくなってしまう。

観客に親孝行を問う。

ラストの葬儀の後、また近所のおばさんが話しかけてくる。皆さんお帰りになってさみしゅうなりましたな。そして、父の周吉はこんなことなら生きとるうちにもっと優しくしてやればよかったと思いますよという。

夫婦間の優しさについても観客に問う。

予告編 http://www.youtube.com/watch?v=ih7usk8w2NY

本編 http://www.youtube.com/watch?v=m9xQCEnWGK8

映画分析感想

この映画が宝物である点

①    親孝行をテーマにしていて、時代を超えて、世界に共通する家族の絆、夫婦と子供、老いと死、人間の一生の物語であること。だから時代を超えて永遠に最高の評価が続くと思われる。素晴らしい脚本、まさに人の心を動かす芸術作品である。

②    演じる舞台が奥行きを作るために三層構造になっていて前景、中景、後景を設定している。それぞれの舞台の人物などに動きが与えられて実にリアルである。外の景色もすべて前景、中景、後景があり必ず動くものが映っている。

③    紀子役の原節子さんが世界に通用する笑顔を持った女優であること。

④    親に対する日本の素晴らしい言葉づかい、敬語が使用されており、いつ見ても学べる。

 

いい台詞

沼田、子供言うもんはおらなんだら寂しいし、おりゃおるでだんだん親を邪魔にしよる。二つええことはないもんじゃ。

周吉、わしも今度出てくるまではもうちょっと倅がどうにかにかなっとると思うておりました。ところがあんた、こんまい町医者でさ、わしも不満じゃ。じゃがのうコリャ世の中の親っちゅうもんの欲じゃ、欲張ったら切りがない。こりゃあきらめんならん。わしゃそう思うたんじゃ。

沼田、いまどきの若い者の中には平気で親を殺すやつもおるんじゃから、それに比べりゃ何ぼかましな方か。

子供の評価は比較のトリックの中にあり、比較対象を変えれば良くも悪くもなるという演出。

周吉、昔から子供より孫の方が可愛い言うけれどお前はどうじゃった。千栄子、お父さんは。やっぱり子供の方がええのう。そうですなー。でも子供も大きゅうなると変わるもんじゃの。志げも子供の時分はもっと優しい子じゃったじゃないか。おなごの子は嫁にやったらおしまいじゃ。幸一も変りゃんしたよ。あの子ももっと優しい子でしたかの。なかなか親の思うようにはいかんもんじゃ。欲を言えば切りがないが、まあいい方じゃよ。ええ方ですとも、よっぽどええ方でさあ、私ら幸せでさあ。そうじゃの幸せな方じゃの。

紀子は母千栄子の肩をもむ。これは金のかからない親孝行。

紀子は千栄子に少ないけれどと言って小遣いを渡す。これも限られた収入の親に対する親孝行。見習うべき。

 

60年前の台詞は今もそのまま通用する。廃れてしまっているけど。深く練られている台詞。

紀子と京子の会話。

母の葬式の後子供たちはみんな夜には帰ってしまい、次男の嫁の紀子だけが後に残る。

 

でもずいぶん勝手よ。言いたいことだけ言ってさっさと帰ってしまうんですもの。しょうがないわお仕事があるから。だったらお姉さんも仕事あるじゃありませんか。

お母さんがなくなると直ぐにお形見ほしいなんて、私お母さんの気持ち考えたらとても悲しくなるわ。他人同士でももっとあったかい。

だけどね京子さん、あたしもあなたくらいの時はそう思ってた。

でも子供って大きくなると親からだんだん離れていくものよ。お姉さま(志げ)くらいになるともうお父様やお母様以外のお姉さまの生活と言うものがあるのよ。悪気があるのではなく、誰だって自分の生活が大事になっていくのじゃないかしら。そうかしら、でも私そんなふうにはなりたくない。それじゃ親子なんてつまらない。

そうね、でもみんなそうなっていくんじゃないかしら。だんだんそうなるのよ。じゃお姉さんも。え、なりたくないけどやっぱりそうなっていくわよ。嫌ね、世の中って、嫌なことばっかり。

 

道徳教育の時間にこの映画を見せるところもあると思われる。古き良き日本の言葉づかいや礼儀は貴重な財産。

お正月に家族みんなで見る映画、ぜひ我が家でも子供たちに毎年見せたい。家族のきずなを残すために。

 

監督の作り込みチェックリスト 監督 小津安二郎

区分

NO

項目

内容

脚本

1

タイトル

東京物語

2

主題

(何についての映画か、問題、主張する思想内容)

家族のつながりと幻想

3

テーマ

(主題についての考え方、メッセージ、見解)

親孝行

3.5

脚本

直線構造

4

場所

東京、大阪、尾道

5

時代

1953年

6

季節

7

期間

1か月程度

8

モチーフ

(反復で表す)

母親の死。

長女の志げが、お母さんまた少しおおきゅうなったんじゃないかしら。太ったのかしら。

母の千栄子が孫に対して、あんたがお医者さんになる頃にはおばあちゃんおるかのう。

紀子がお母様またどうぞ東京へいらっしてください。へえ、でももう来られるかどうか。

千栄子の、これでもうもしもの事があってもわざわざ来てもらわんでもええけえ。

志げ、まるで一生のお別れみたいに。東京に来たのも虫が知らせたのよ。

医師の長男幸一がお母さん太っておられたから急に来たんだよという。

 

大阪の敬三は親孝行したい時に親はなし。

さればとて墓に布団は着せられず。×2回

 

お父さんお母さん×7回

 

もう戦争はこりごりや→某TV局だったら5回以上台詞あるだろうがこの脚本は1回きりでかえって印象的。息子たち三人が戦争で亡くなっているで十分。

 

父周吉と母千栄子が個別に、亡くなった二男の嫁の紀子に、いい人があったらあんたいつでも気兼ねなしにお嫁に行ってくださいよ。×2回

そうでさあ、幸せな方でさあ。2回

 

9

隠喩

(別のもので意味を伝える)

医者の長男幸一の親子関係は子供が親に従順ではないが、これは尾道の親と東京の息子や娘たちと同じ関係である。

 

母の危篤で尾道に駆けつける時、東京の兄幸一と長女志げは相談して喪服を持参するが、次男の嫁の紀子は持っていかない。母親の命に対する考え方の演出。

 

長女の志げは葬式の後すぐに母の形見分けに帯と着物を要求するが、紀子は父周吉から妻がたいへんやさしくしてもらって感謝していたと妻千恵子が持っていた懐中時計を形見に受け取ってほしいと言って渡す。親孝行へのお礼を演出。

ビジュアルデザイン

10

照明

(キーライト、フィルライト、バックライト)

父周吉と母千栄子が泊まるところがなくなって紀子が会社から帰るまで時間つぶしをしているとき、カメラは後ろ姿だけをとらえ、かつ背中には影が落ちていて心情を演出。そしてただ一か所のカメラが移動するドリー撮影。

紀子のアパートで母親と紀子が寝ていて、母親泣いて紀子の顔と寝まきが明るく考えているシーン。

美容室で妻と夫が寝ていて妻だけに明かり、直ぐに警官にたたき起こされる。

泥酔した父親が深夜家に来て、長女志げがしようがないねと言ってこちらに歩いてくるシーン、怒る娘が暗いシルエットに。

泥酔した父親後ろ向きで、後ろから照明、顔は影。

母千栄子の枕もと、後ろ向き三人は影で危篤の母を見る。

父周吉が亡くなった母千栄子の枕もとでこの間東京へいて疲れたのが意見勝ったと言う時、顔に影の演出。

母がなくなってからの喪服の話の時、紀子の身体に影。

顔だけではなく体に影を落とす演出。

敬三が死に際に間に合わず、横顔に影。

11

色使い

(コントラスト、配色)

娘の志げと紀子の寝まきは白い色で照明をあてて心情を演出。

母親が危篤の時の志げの着物は黒っぽい地味なものになる。

12

主役の色

(どのように目立たせているか)

女性の寝まきは白い色で目立つ。

紀子の服装はいつも白で黒のスカート、清楚で優しい正直者を感じる。

13

カラー白黒

白黒

撮影

14

フレーム

(スタンダードサイズ、ワイドスクリーン、シネスコープ)

スタンダードサイズ

15

配置

画面に現れる人は総て重ならない配置になっている。

カメラを意識した立ち位置が徹底している。

NHKの朝ドラ「ごちそうさん」を見ていたら同じようにキャストがカメラから見て重ならないように配置されていた。

16

オフスクリーン

(スクリーンの外を描く)

尾道の玄関の引き戸の動く影が壁に映る。

医院の玄関の音、チリチリンと聞こえてくる。

紀子のアパートで食器を洗っていると汽車の汽笛が聞こえる。

尾道のポンポンと言う船のエンジン音。

17

カメラワーク

(ロング、フル、ミディアム、ウエスト、クローズアップ、超クローズアップ)

ミディアムショットやウエストショットの時、人物にピントが合い、背景は少しぼけるが、動く人や背景に何があるかはすべてわかる。ほんの少しのぼけにとどめていて被写界深度は深い。当然三層構造の舞台を奥に並べているから、最小限にぼけにして背景が見えるようにしている。

今の被写界深度の浅い一眼ムービーの撮影はぼかすと背景が光くらいしか表現できないので、モデル撮影向きと考えられる。映画で使用するには脚本のキャストの心情表現をどうするか、背景をどうするか相当考えないと難しい。

18

アングル

凄いのは、撮影するスタジオがきっちり奥行きのある三層の舞台になっていること。カメラから見ると前景舞台、中景舞台、遠景舞台の三層構造になっている。だからキャストは前景あるいは中景の舞台で演技する。その間に遠景では隣の家にいる人物が動いている。その舞台を固定カメラの仰角で撮影。ほとんど人物はローアングルで撮影して人物の尊厳を演出。

とにかく奥行きのある映像でZ軸を大切にしている。映画のスクリーンは平面だけど、奥行き三層の舞台を作って各舞台で人が動くのだから立体的である。

夏のスタジオだから窓を開けて奥の部屋が見える。さらに奥の部屋も窓を開けていて遠景の部屋の人やモノまで見えている。小津監督の冬の場面をどう取っているのか見てみたい。窓が開けられないから奥行きのある三層舞台が使えない。どう演出しているのだろう。

景色も前景、中景、遠景をきちんととらえている。その上、中景の中に動くものがある。船とか汽車とかバスが動く。多分尾道を選んだのは海を船が通過する。線路の近くを選んだのは汽車が走るから、道路があるのはバスが走るから。すべての画面に動きがある。活動写真と言われるゆえんである。だからキャストのシーンでは団扇や扇子、たばこを吸うなどしてキャストに動きを与えている。それは徹底している。動きのない場面はない。

また、キャストやエキストラはみんな違う動きをしている。それぞれの仕事や役目に応じたバラバラの動きをする。だからリアリティが出る。

奥行きのある三層構造の舞台設定、登場するキャスト全員の個別の動きが画面にリアルな躍動感を生む。

キャストは正面を向かない。正面から撮影するのは紀子役の原節子さんだけ。他のキャストは全部体を斜めに配置、首をカメラ方向に向けて台詞を言う。それがまた美しい姿になっている。

外の景色も前景、中景、遠景の三層になっている。その中には物語の場所が分かる工夫がされている。大阪の場合は遠景に大阪城が小さく見えている。

尾道の出だしの映像については近くの人しかわからないかも。自分もどこかわからなかった。もう少しシンボル的なものを入れるとか、駅を使うとか。分かりやすいといいかも。尾道は大阪以西の人しか場所も分からないのでは。

シーンの場所が切り替わるたびに象徴的な映像が入る。尾道なら海と船。東京は煙突から黒い煙。兄幸一の医院の外観や土手、美容室の外観、紀子のアパート全景など。環境音やBGMも切り替わる。

熱海の海岸の堤防の上を父と母が歩くシーン、手前の堤防下の水たまりに黒い二人の影が映って同じように歩いて行く、暗い心情の演出。

ラストシーンの周吉の寂しい姿のショットは有名。

19

主観ショット

(本人目線)

会話の中で主観ショットがある。沢山のキャストがカメラからみて重ならないように配置されているため、話すときは相手の方に首を振ってから話している。

20

スローモーション

なし。

編集

21

スーパーインポーズ

(別の映像を重ねる)

なし。

22

リアクションシカット

(加害者、被害者)

飲み屋の女将と沼田。

紀子のカットで会話の途中で手で髪をなでるしぐさのバストアップシーンが2回ある。

志げもある。女性らしさのカット。

23

ディテールカット

(目や手)

この時代にはクローズアップは使わなかったのかもしれない。当然超クローズアップもない。バストショットまでである。

24

カットアウエイ

(別のカットを挟む)

ない。

25

カットバック

(全く別の状況に交互に切り替える)

ない。

26

モンタージュ

(裏の人格を見せるなど)

ない。

27

カラコレ

 

音響効果

28

効果音

シーンに応じたBGMを使用している。

尾道は海が近く船のジーゼルエンジンのポンポンと言う音。母が亡くなってからの尾道のセミの声。

居酒屋で旧友と戦争の話をしているとき、軍艦マーチのBGM。

医院の二階は祭の太鼓と笛。

美容院は三味線と太鼓のBGM。

お葬式の後のひじの食事会ではお念仏のBGM。

教員の京子が務める小学校のシーンは童謡のBGM。

29

沈黙

母がなくなった時、母の部屋に四人が座り、兄幸一はたばこを吸い、長女志げは涙をふくシーン.

30

モンタージュ

(音と音、並列繋ぎ、対比繋ぎ)

シーンに合わせた自然音やBGMを入れている。

31

サウンドミックス

(音の重ね方)

祭囃子はほんの小さな音、会話がなくなると少しボリュームアップ。

尾道の環境音に船の汽笛、あるいは汽車の汽笛。

32

モチーフ

(同じ音の繰り返し)

東京は工業地帯の映像と音、尾道は海とセミと船の音。

感想

33

 

前掲

あの頃ペニーレインと枠.jpg

このような素晴らしい作品を一度しか見ない観客にその醍醐味を味わってもらうにはどうすればいいのでしょう。一回目は従来通り自分流で映画を見る。縁あってブログを読んで気に入ったなら監督が埋め込んだ宝物を見つけるためにもう一度見て味わいつくす。三回見ると宝物が身体の中に入ってきて自分のものになると思います。

http://www.youtube.com/watch?v=qgdp1I7xklU

http://www.youtube.com/watch?v=_qW9wqUI4Lg

脚本

キャメロン・クロウ監督が自身の体験を基に、ブレイク寸前のロックバンドのツアーの同行取材をした15歳 の少年の姿を描いた青春音楽ムービー。15歳の少年ウィリアムは伝 説的なロック・ライターに自分の記事が気に入られ、ローリングストーン誌の仕事をもらう。そして、グルーピーの中にいたペニー・レインに一目惚れする。

映画分析感想

前段は本編とは直接関係しない前振りでサーフィンのカットの続きで9月のクリスマス飾り、将来の目標などに触れている。

母親はどうして娘がキスして帰ったのが分かったのか?

反抗する娘は母親に向かって知識の押し売りはやめてという。

母親は知的な人生を送るために子供を厳しくしつけているが、どこの親も同じ気持ち。

この映画は台詞が膨大(1300位)で、その中に宝物が仕込まれている。

以下お気に入りの台詞

小学校は無駄が多いから飛び級したの。

人と同じでなくていい、大事なのは個性よ、余った2年を自由に使えるわ。

本物の音楽は音楽が人を選ぶんだ。車の中やヘッドホンで聞くと雄大な風景が広がって天使の合唱が響く。→芸術。

君の文章は光っているが、ロックの全盛期は過ぎた。お終いさ。ロックは断末魔を迎えて喘いでいる。→映画に置き換えられる。

行き詰ったら電話してこい、夜中でもいい。→素晴らしい天才ロックライターの言葉

顔のいい男は根性無しでその芸術も長続きしない。だが俺達には頭脳がある。→言える。

偉大な芸術は罪悪感やあこがれから生まれ、セックスや愛が絡み合っている。→映画そのもの

行き詰った時は心を分かち合う友達を持て、本当の友達なら正直になれ、そして手厳しく。

グルーピーはロックスターと寝るだけ。私たちは音楽を愛してバンドを助ける支援グループなの。彼らとは寝ないわ。フェラだけよ。→グルーピーと同じ。

歳は?とペニーがウイリアムに聞くと18歳、するとペニーは私もよと言う。17歳と言うとまた私もよと言う。16歳と言い直すとまた私もよと合わせる。ペニーとウイリアムが友達になった演出。

音楽で大事なのはハイな快感が聞き手に伝わるかどうかだ。ゾクゾク感だ。→映画に置き換えられる。

俺の興味は本物だけだ。本物の人間、本物の感情それがすべてさ。おまえは本物だ。

飛行機が雷雨で操縦できなくなり緊急着陸を決意したとき、バンドメンバーが秘密を吐露する。ひき逃げをしていたマネジャー、浮気をしていたラッセルの彼女、ギャラをくすねたこと、マーナと寝たこと。仲間割れ、どっち道死ぬんだ、ラッセルはペニーと寝まくった。俺はゲイだ。しかしその後奇跡的に雷雲を抜けて、飛行機は無事着陸。その後の気まずさはよく描けていた。

ストーン紙の表紙に載ったらママに5部買おうという。→親孝行なんだ。

ペニーはウイリアムだけに本名を明かすが、ラッセルには明かさない。ウイリアムとのつながりを演出。

馬鹿げた音楽やバンドを愛するってことは、自分もずたずたに傷つくってことよ。→教育映画みたい。

家出した姉がスチワーデスの仕事を休んでウイリアムと世界中のどこへでも好きなところに行こうと言って、自宅のママのところに帰ってくる。→実は家が一番行きたいところと言う演出、家族愛。

ラストシーンは関係者全員がハッピーエンド。ラッセルたちのバンドはスター街道を歩み、ウイリアム一家は姉が家に戻り母と三人で楽しい食事風景、ペニーは黒のワンピースで変身してモロッコへ旅立つ。ウイリアムのバンド同行記事はラッセルが内容が真実だと伝えて採用されて雑誌の表紙を飾り、大きく掲載される。

キャストを丁寧に描いていて、人生の大切なことをロックバンドの同行取材を通して見せる映画で素晴らしい。

 

監督の作り込みチェックリスト 監督キャメロン・クロウ

区分

NO

項目

内容

脚本

1

タイトル

あの頃ペニー・レインと

邦題が素晴らしい。

冒頭手書きの映像でテロップを書いていてサクサクという音がいい。

2

主題

(何についての映画か、問題、主張する思想内容)

青春音楽ムービー

3

テーマ

(主題についての考え方、メッセージ、見解)

バンドの同行取材を通して人生を語る

3.5

脚本

直線構造

葛藤

楽屋に入れてもらえず3回追い返される。

バンドがTシャツのデザインが原因で仲間割れするとき。

ライブの感電事故でバンドがゲートを突破するとき。

童貞狩りの被害に会う時。

ラッセルがLSDをやって屋根からプールに飛び降りようとするとき。

ペニーレインが睡眠薬過剰摂取で死にかけて助ける時。

飛行機が雷雨の中に入って緊急着陸すると言われた時。

 

味方

クリームマガジンのレスターバングスと出会い、サポートしてもらえることになる。人生訓を教えてくれ、記事が書けないときに電話で相談に乗ってくれて窮地を脱していく。

敵役

母親、バンド、ローリングストーン誌

4

場所

アメリカ

5

時代

1973年

6

季節

9月

7

期間

足掛け2年間

8

モチーフ

(反復で表す)

ロックは麻薬やセックスの歌よ。2回

麻薬はだめ。3回

評論家で成功したければ、正直に、手厳しく書け。2回

天敵。5回

私の秘密を握られた。一番言うべきでない相手にばらしちまった。ペニー、ラッセル、ウイリアムの三人の秘密。3回

冒頭、ペニーがウイリアムの顔の髪をどけて額を指で押して顔つきを変えてこの方がいいよと言う。後半ペニーが睡眠薬からよみがえり、今度はウイリアムがペニーの額に指を当てて髪を横にどけてこの方がいいよと言う。二人の心情を演出。

スチュワーデス

家出した姉はスッチーになる。ペニーレインはスッチーのまねをして機内アナウンスをやる。ペニーが睡眠薬を飲んだ時もスッチーのまねをしろと言う。ウイリアムとの別れで機内アナウンスが流れる。監督はスッチー好き。

モロッコ

ペニーはモロッコに一年住みたいと言う。ウイリアムも一緒に行くという。途中でモロッコの話が出てきて全く違う服を着て別人になるの、ラストでペニーが別人の服装でモロッコ行のチケットを買うシーン。→伏線が敷かれている。

 

ペニーとウイリアムは同じ街に住んでいるんだから。2回

 

母親がラッセルに言う、まともな人間になれるわ。2回

 

9

隠喩

(別のもので意味を伝える)

バスの正面の行き先に、「もう飛行機には乗らないツアー74」飛行機で命を落としかけたため。

ビジュアルデザイン

10

照明

(キーライト、フィルライト、バックライト)

 

11

色使い

(コントラスト、配色)

全体として美しい。

12

主役の色

(どのように目立たせているか)

大人の男性の中で一人子供の姿。

13

カラー白黒

カラー

撮影

14

フレーム

(スタンダードサイズ、ワイドスクリーン、シネスコープ)

ワイドスクリーン。

15

配置

いつもバラバラに配置、気持ちがまとまっていない演出。

メンバーのまとまりは全員が歌うことで表現。

16

オフスクリーン

(スクリーンの外を描く)

17

カメラワーク

(ロング、フル、ミディアム、ウエスト、クローズアップ、超クローズアップ)

ツアーバスを捨てて、飛行機に切り変える時、飛行場に大型バスを止めてその上空を飛行機が飛び去るシーンで、移動手段が変わったことを演出。

ホテルの受付係が母親に怒鳴られたよと言うシーン。受付係の怒った顔がクローズアップ。

空のバスタブでウイリアムが取材メモを書いているとき、散らかったメモがクローズアップ。

 

18

アングル

NYでラッセルと彼女を大きくとらえて、遠くにペニーをとらえている。ラッセルのペニーへの意識がペニーへのピントで演出、三角関係を表現。

19

主観ショット

(本人目線)

 

20

スローモーション

 

編集

21

スーパーインポーズ

(別の映像を重ねる)

ウイリアムが11歳の時に姉が家出してベッドの下から置き土産のロックのレコードを取り出す。

蝋燭の灯をともしてロックを聴くと未来が見えると言われて実行するが、回転するレコードの映像と蝋燭の明かりに照らされるウイリアムの映像が重ねられて、そのあと15才後の映像にワープする。つまり未来を見に行くという映像切り替えになっている。

22

リアクションシカット

(加害者、被害者)

23

ディテールカット

(目や手) ウイリアムが童貞狩りにあうシーン、ペニーの両目の超クローズアップ、ウイリアムの両目の超クローズアップが三回繰り返される。三回目のウイリアムの眼には飛びはねてウイリアムの周りを回る女の子が映っている。

そしてペニーがバイバイのしぐさをしてウイリアムは童貞と別れを告げる。

24

カットアウエイ

(別のカットを挟む)

25

カットバック

(全く別の状況に交互に切り替える)

何故二人の子供を遠くへ手放したのかしら、手元に置いておけばよかったと語るシーンで母親とツアーに同行しているウイリアムの映像のカットバック。

ラッセルが母親と電話していて、天才批評家の母親ってどんな気持ちだい?と言うシーンでラッセルと母親の顔がカットバック。

26

モンタージュ

(裏の人格を見せるなど)

 

27

カラコレ

 

音響効果

28

効果音

バンドのメンバーが喧嘩してバラバラのままバスツアーを続けるが、途中で歌を歌い始め、しばらくして全員が歌に加わり気持ちが一つになったことを演出。

ロックが効果的にBGMとして使われている。

 

29

沈黙

ツアーのプライベートジェットが雷雨で墜落しそうになった時、皆が今まで隠していた秘密を吐露したが、奇跡的に雷雨を無事に抜けたあと、秘密を話した後ろめたさからの沈黙。

飛行機を降りて長い空港の通路を歩く時、後ろめたさからみんな長い沈黙。

 

ラッセルがペニーの住所を聞いて自宅に会いに行った時、様子がおかしくて、写真盾を見たらウイリアムの写真。騙されたと気付いた時に長い沈黙。

30

モンタージュ

(音と音、並列繋ぎ、対比繋ぎ)

 

31

サウンドミックス

(音の重ね方)台詞の重ね方

ラッセルの彼女がペニーを見て、あの女誰よ、ムカつくと言うと、そこにいた全員の男たちが「おれの女」だと声をそろえて言う。

32

モチーフ

(同じ音の繰り返し)

 

感想

33

 

前掲

1onceのコピー枠.jpg

脚本

ストリートミュージシャンが移民の才能にあふれたピアニストと出会い、その腕と才能に驚き恋愛感情を持ちレコーディングしてロンドンに行くが、二人は元の鞘に収まって別れる話。ストーリーの心情はよりを戻さないの?と聞くと歌を歌って応える。各シーンのストーリーがオペラのように歌詞の内容で語られていく。

http://www.youtube.com/watch?v=qJjcZa1dYq0

映画分析感想

スタートのギターボックスの銭泥棒はどういう意味なのか。ミュージシャンの体力や優しさを紹介しているのかな。ストーリーは本ポンと関係ないが歌はうたっている。移民の彼女の押しが強く、掃除機修理も断っているのにやらせる。銀行の借り入れも交渉する。スタジオ契約では値切って交渉成立させる。そして音楽の才能がある。

銀行にレコーディングの融資を頼みに行った時、デモテープを聞かせると銀行員はギターを弾いてOKを歌うと言う演出。

彼からCDをもらうとプレーヤーも借りる押しの強さ。

銀行に金を借りに行く時、彼女の行きつけの古着屋で彼のスーツを買う。見てくれが悪いと相手が信用してくれない演出。

パーティーの乾杯も歌で乾杯。台詞を歌で表現するオペラのような映画。

葛藤はないがミュージシャンが世に出行く姿を追う映画。

恐ろしいほどの超低予算の小品(製作費は日本円でわず か1800万円)ながら、アイリッシュ魂や彼らの音楽の神が宿ったかのような奇跡の音楽映像。

スタジオ録音風景も素晴らしく、録音した曲のヒットを予見させる。

車のCDでスタジオ録音した音を確認するのは理解できる。映画やビデオも編集スタジオでは種類の違う6台以上のモニターで確認する。DVDを作った場合は手元にある複数のモニターやPC、TVなどの画面で映り具合を確認する。

DVDは配布すると顧客がどんな再生機器で観るかわからないため多種類の再生機器でテストするしかない。それでも古い再生機器だと再生できない場合もある。だから再生機器によっては読めない場合もあると必ず記述する。

彼 女の音楽才能に驚嘆して、別れにピアノをプレゼントする。彼女はラストシーンでピアノを弾いていて、カットは彼女が外を見ている様子を映して窓の外の景色 にパンする。彼女は音楽の才能を開花させていく予感。きっとロンドンから彼女に応援に来てくれと連絡してくるような気がする。彼女のピアノと作詞作曲才能 がないと困るだろう。

ラストシーンのBGMの歌は彼と彼女のデュエットになっていて二人の気持ちが通じ合ったことを演出。

彼女は親がオーケストラのバイオリン奏者で指を痛めた。娘には指を痛めないピアノを習わせた。親から本物の技術を教え込まれた子供は凄いと感じる。

愛は愛でも恋愛ではないので目的のSEXには流れない。音楽を愛する心が通じ合ったことを表現している。

恋は終わりを告げて二人は微笑んで別れる。このようなラストで好き合った二人が別れてお互い元の鞘のペアに戻る映画は珍しい。

素晴らしいミュージック映画。台詞のオペラ演出。

 

監督の作り込みチェックリスト 監督ジョン・カーニー

 

区分

NO

項目

内容

脚本

1

タイトル

ONCE ダブリンの街角で

2

主題

(何についての映画か、問題、主張する思想内容)

ふたりをつなぐ、愛より強いメロディ

3

テーマ

(主題についての考え方、メッセージ、見解)

人生でたった一度、心が通じる相手に出会えたら

3.5

脚本

直線構造

4

場所

アイルランド ダブリン

5

時代

2006年の作品

6

季節

7

期間

10日程度

8

モチーフ

(反復で表す)

ミュージシャンの演奏。彼女の素晴らしいピアノ演奏

彼女の押しの強さ、行動力

移民の共同生活(隣から二回テレビを見に部屋に来る)

9

隠喩

(別のもので意味を伝える)

 

ビジュアルデザイン

10

照明

(キーライト、フィルライト、バックライト)

ダブリンの街角でストリートミュージシャンが演奏するカット、左右には明るいショーウインドウがありその間の暗い通路でボロギターを弾いている。明るくない生活環境を演出。

バスの後席でギターを弾くシーンはバスの後ろから光線が入り、バックライトになって美しい映像。

彼女の住む安アパートの階段は明かりがなくてうす暗くて生活環境が厳しい演出。

彼女はいつも明るく生きていて、顔に影が入ることはない。

11

色使い

(コントラスト、配色) 楽器店でピアノを借りて低シーンは、背景にギターが美しく飾られている。

彼女が店に乾電池を買いに行ったシーン、店の中がカラフルで美しい。物語の映像は暗いシーンが多いが生活から離れると明るい世界があると言う演出。

12

主役の色

(どのように目立たせているか)

主役の顔には口と顎に髭を生やしている。

13

カラー白黒

カラー

撮影

14

フレーム

(スタンダードサイズ、ワイドスクリーン、シネスコープ)

ワイドスクリーンサイズ

15

配置

彼女の部屋に移民の3人の若者がテレビを見に来るがソファーに一列に座っていて、団結して共同生活している演出。

移民に限らず外国人は大体定期的に集まるサークルに入って情報交換して助け合っている。あるいは同じマンションにまとまって住んでいる。また、首都で暮らす地方出身者も同郷の飲み会などで情報交換して助け合っている。故郷から離れて暮らすというのは同郷の者が助け合っていくのが自然の姿。故郷納税もありますから。

16

オフスクリーン

(スクリーンの外を描く)

17

カメラワーク

(ロング、フル、ミディアム、ウエスト、クローズアップ、超クローズアップ)

主に手持ち撮影。

花売りの女性が掃除機をし遊離してほしいと言って掃除機を引っ張って犬をれてくるように歩いてくるシーンが未見性に溢れている。ストリートミュージシャンと連れだってまた掃除機を引っ張って歩いていくシーンはおかしい。

楽器店でピアノを借りて弾くシーンは手持ちのカメラが曲に合わせて揺れてリズムをとるような画像。

スタジオ録音したCDをカーステレオで聴くために海岸へ繰り出す。砂浜の朝日が昇るシーンが美しく、これからのヒットを予感させる演出。

彼女とバイクで丘の上に行き海岸線を見下ろすシーンは広大な海岸線で美しいカット。

デートコースなのかな。

ロンドンに彼女を連れて行くのをあきらめて、彼女に例の楽器店でピアノを購入してプレゼントする。彼女の亭主が戻ってきている。親子の生活風景、彼女のアパートにピアノが届いて彼女が喜ぶ。そしてピアノを弾くシーンを窓の外からズームでとらえて、街並みにパンして終る。その間彼と彼女のデュエットがBGMで流れる。

 

18

アングル

楽器店で彼女がピアノを弾くのを聞いて、その才能に驚嘆して彼が屈みこんで、ピアノを弾く彼女より顔が下に来る、かつ彼女が手前で大きく映され彼女の力関係が上になったことを演出。

ミュージシャンは基本的に仰角で撮影しており、大切な存在として扱っている。

スタジオの録音エンジニアは当初変なバンドの相手をさせられていると電話していたが、録音が始まると曲の素晴らしさに驚き態度が豹変して好意的になる。

楽器店でピアノを弾くシーン、彼女の背景はメンデルスゾーンを弾いているのに写真はブラームス(多分)とモーツアルトと言うのはどうして?

19

主観ショット

(本人目線)

スタジオ録音の休憩時に男性が彼女が高級ピアノを華麗に弾く姿を見るカット。そしてロンドンに一緒に行こうと誘うが、母も一緒にと言うとその話は途切れる。

20

スローモーション

なし。

編集

21

スーパーインポーズ

(別の映像を重ねる)

 二人がランチを食べている時、通りからの撮影でガラス越しに二人をとらえるが、通りを歩く人がガラスに映っている。街の喧騒を演出。

22

リアクションシカット

(加害者、被害者)

23

ディテールカット

(目や手)

24

カットアウエイ

(別のカットを挟む)

スタジオ録音風景と関係者のパーティの様子がカットバックされて楽しく録音していることを演出。

25

カットバック

(全く別の状況に交互に切り替える)

ストリートミュージシャンの元彼女の映像はPCで動画を見ているシーンにして現在の映像とカットバック。

こんな方法もあるんだ。

 

26

モンタージュ

(裏の人格を見せるなど)

掃除機を犬のように引っ張って歩道を歩く姿で、目的のために突き進む意思の強さを表現→意識に残るシーン

27

カラコレ

 

 

音響効果

28

効果音

第80回アカデミー賞歌曲賞受賞。

各シーンに歌のBGMを入れている。

彼女がスタジオのボールドウィンのピアノで弾く曲は素晴らしい。松居慶子のピアノのよう。

BGMはシーンをまたぐ場合もある。歌を主体にして映像を乗せている感じ。

29

沈黙

 

30

モンタージュ

(音と音、並列繋ぎ、対比繋ぎ)

これはミュージック映画。バイクで高台から海岸を見に行くドライブ以外は全シーンに歌が流れている。バイクのシーンはバイクの音がBGM。

31

サウンドミックス

(音の重ね方)

スタジオ録音で10分間休憩があり、隣の部屋の高級ピアノで彼女が作曲した曲を弾き語りするが、素晴らしいピアノ曲で「松居慶子」をすぐに思い出スメロディーだった。

32

モチーフ

(同じ音の繰り返し)

彼女の素晴らしいピアノ

感想

33

 

前掲

台北の朝1枠.jpg

脚本

主人公は彼女がフランスに行くタクシーを見送る。彼女に会いにフランスに行きたい。そのためにフランス語を勉強するために書店に通う、そこでスージーとめ ぐり合う。フランスへの渡航費用がないためにやくざから借金するが、やくざは今回のブツの取引を最後に彼女と海南島でのんびり生活したいと考えている。こ のためにカイはブツの運び屋にされる。その骨組で物語が進む。

http://www.youtube.com/watch?v=fj_6kqjVNh8

映画分析感想

少し脳味噌か足らないやくざたちのコメディ。

不動産屋のやくざから金を借りるカイ。カイはお粗末な男。

公園のダンスの中に紛れ込んで掲示を巻く。いったんは二人を見つけてピントが合う。しかし、刑事はその先に元彼女が男と歩いている姿を見つけて追跡する。公務よりも私事を優先するおかしさ。人間の弱みを表現。

全体に照明かを使った明るい画面でカラーの発色がいい美しい映像になっています。CANONの色と言えば分かりやすいでしょうか。

年を重ねていい思い出と語るやくざの不動産屋パオの恋物語を下敷きに。

メインとして主人公カイと書店のスージーの恋物語。

それに絡めてコンビニ店員のカオの職場の恋物語。

更に恋の終わりを表現する刑事の同棲相手に逃げられる恋の終わり。

の4つの物語があり、3つの恋物語は主人公カイトスージーの恋に至る過程を彩る。

この映画の男たちは全員少し脳味噌が足らない感じのコメディタッチ。

まともなはやくざの不動産屋だけ。ブツの運搬にも偽物の囮を使う頭の良さ。

そして台北の特徴として食文化をモチーフにしている。

脚本は3つの恋物語の積み上げ、ビジュアルデザインは書店のカラー背景を恋の舞台にした美しいカラーデザイン、照明もいい。撮影アングルも工夫しているし、編集で3つの恋物語を同時並行して進めている。音響効果のBGMも自然に入っている。

光(明、暗)とカラーリングで映画に登場する人物の心情を見事に描いた芸術的完成度の高い作品で素晴らしい。

監督の作り込みチェックリスト台北の朝、僕は恋をする 監督: アーヴィン・チェン

区分

NO

項目

内容

脚本

1

タイトル

台北の朝 僕は恋をする

2

主題

(何についての映画か、問題、主張する思想内容)

恋愛

3

テーマ

(主題についての考え方、メッセージ、見解)

恋愛の始まりと恋愛中と恋愛の終わり

3.5

脚本

直線時系列構造。

4

場所

台北

5

時代

2011年

6

季節

冬場 長袖

7

期間

数か月

8

モチーフ

(反復で表す)

コソ泥が趣味、くじを盗む、ヤクを盗もうとする。

恋をすることはいいことだ。

連れ込みホテルの受付のおばさんも恋愛TV番組を見ている。

台北の食文化を水餃子などで表現。食文化の存在を映画のモチーフにしている。「美味いな」の台詞。

やくざの若い頃の写真。

9

隠喩

(別のもので意味を伝える)

やくざの恋の話。やくざのパオはテレビでやくざ者の番組を見ている。

 

 

ビジュアルデザイン

10

照明

(キーライト、フィルライト、バックライト)

台湾の美しい夜景から入っていく。初めは引きの映像、次に車とバイクの走る夜のライトが浮かぶ映像。ネオンと人の動きが浮くしい。被写界深度は浅く背景のネオンはぼける。

初めにフランスにいく彼女を見送るシーン、彼女の顔は明るくて未練なく、男性は未練たっぷり顔の半分に影の演出。

カイの部屋の窓の外のカラーリングそれぞれ変えてあり美しい。カラオケスナックも赤中心で発色がよい。カイの家の食堂の発色もいい。

台湾の下町の映像はカラフルな提灯がいつも配置されていて夜のシーンを演出している。

カイが自分の部屋からフランスの彼女に電話するシーンの窓の色はすべて違うことで会いたいが会えない彼の混沌とした心情を表現。

フランスの彼女が電話に出ない時のカイの部屋の窓の明るさは暗く、カイの心情を演出。

宝くじ屋を襲う時のチンピラの顔には悪事をしている暗い影がある。

チンピラ達の車の中もカラーリングされていて美しい。

チンピラに強奪されたおばさんの横顔は影になり暗く沈んでいる演出。

やくざが宝くじ屋の事件はお前だなと問いただしているシーン、やくざの顔に影があり困った奴だという心情演出。しかしチンピラの甥は顔が少し斜めで話を聞いており、聞き流していることを演出。

やくざが荷物の運び屋をカイに依頼している時、後ろめたさからやくざの顔半分に影の演出。カイは何も知らないから顔に影はない。

フランスに行く時のカイとスージーは黒い姿になる。二人の心情を演出。

コンビニの店内の映像も明るくて商品のカラーは配色が良く発色もいい。書店のように美しい映像。恋が始まる予感。バイクのシーンも美しい。

フランスの彼女について聞くとカイの顔に影。連絡がついていない演出。その上僕が行くのを知らないと言った時も顔に影。やくざのパオからブツはあるかと言われて、あると嘘を言うカイの顔の半分に影の演出。

スージーは朝自分の部屋に戻るが、窓は朝日で明るいが彼女の姿は黒いシルエットで辛い気持を演出。顔も映さない。

刑事二人の夜の張り込みの映像はネオンが顔が明るく青色に照らされる。他のシーンがカラーなのでモノクロ風が印象的。

チンピラが叔父のブツを横取りする指示をするシーン、指示するチンピラの顔半分に後ろめたい影を演出。

チンピラがパオの部屋で電話に出てカイからの電話を居留守を使って断るシーンは嘘をついているためチンピラの顔は黒い影で覆われている。

刑事の元彼女のアベックは暗い路地に入っていくし、家の間腕も顔が暗い、疑わしい男女の仲の演出。

夜の公園も道路の照明が配慮されていて公園の緑いろが美しい。

そしてまた本屋で働くスージーの背景の本棚はカラフルで発色がいい。

深夜自宅の食堂にスージーを連れていた時、黒画しばらくしてここはどこ? そしてシャッターを開けて店の映像に。黒画面の使い方がいい。

フランスへ行かなかったカイが書店に来てスージーに声をかける。スージーは知らん顔、カイは追いかけるがスージーの横顔は微笑んでいる。顔も微笑む。ここで二人の気持ちがつながった演出。

 

11

色使い

(コントラスト、配色)

全体に明るくて発色がよい美しい映像。発色を高めるために相当の工夫あり。

書店のスージーが出ているシーンは本棚の本のカラーリングが素晴らしい。配色が美しく工夫。ラストでカイとスージーが明るくて発色のいいダンススタジオで笑顔で踊るシーン。二人の幸せをカラーで演出。

不動産屋のチンピラはオレンジ色の制服、友達のコンビニ店員は黄緑色の制服でキャストをカラーで分けてその立場を明確にしている。

 

家出した彼女の新しい家の門のドアは真っ赤な色に塗られている。怒りの演出か?

 

フランスに行かずに書店に戻ったカイの服装は、書店の本棚に合わせたカーの服装に変わっている。心情が彼女に移ったことを演出。

 

この映画はヒロインのスージー役(アンバー・クォ)のための作品。彼女が登場する書店の本棚の発色のよさときたら最高で彼女をキラキラ輝かせている。

12

主役の色

(どのように目立たせているか)

背景のカラーの発色がいい分キャストの服装は地味。それが背景と対比して良く引き立つ。

13

カラー白黒

美しいカラー。

撮影

14

フレーム

(スタンダードサイズ、ワイドスクリーン、シネスコープ)

タクシーでフランスへ行くためにタクシーに乗るシーン。書店員のスージーの姿は小さく、カイノ顔には影があり複雑な心境を演出。

15

配置

不動産屋のチンピラ三人はいつもまとまっている。

16

オフスクリーン

(スクリーンの外を描く)

17

カメラワーク

(ロング、フル、ミディアム、ウエスト、クローズアップ、超クローズアップ)

カイの生活は毎日同じ繰り返しで、食堂の手伝いとバイクで家に帰る、自室に戻るが二回繰り返され、単調な日々を演出。

真心不動産のチンピラはオレンジ色の制服のままで窃盗を働く馬鹿ぶり。

 

街の人ゴミも美しい。一度真上からの俯瞰ショットがあり印象的。

美しい書店の背景は手前に本棚を置いて奥行きを出している。そこに主人公とヒロインの出会いの場が作られている。二人の先を予見させるカラーリングの舞台設定。

18

アングル

刑事はダンスの輪の中に逃げ込んだ二人をいったん認識する時に二人にピントが合う。しかしその先に元彼女がいてそちらに気が行ってしまう。

夜の街の引きの映像はZ軸を意識したアングルで奥行きを感じる。

台湾の本屋では座り読みらしい。日本なら立ち読みなのに。

本屋でヒロインは毎回右側から画面に登場することでカイの存在よりも強調している。

刑事の彼女が食事を作って出したのに刑事が食べずに出で行くシーン、引きのアングルで左手前のテーブルの料理、出かける刑事、キッチンの彼女が配置されていて彼が出かけた後しばらく料理と彼女の横顔の映像が残り彼女が家を出ていく原因を演出。

書店のアングルはスージーは仰角、カイは観下げるアングルで心情を演出。

ラストはカイがスージーとスージーの習い事のダンスを一緒にするシーン、カイが彼女の心の中の世界に入っていったことを演出。

19

主観ショット

(本人目線)

刑事が家に戻ったら歯ブラシが自分のものだけになっていて彼女が出ていったことを演出。

追跡者のカット。

20

スローモーション

ラストで書店に戻ったカイとスージーが顔を見合わせて歩きながら笑顔になるシーンはスローモーションで印象を強めている。

編集

21

スーパーインポーズ

(別の映像を重ねる)

22

リアクションシカット

(加害者、被害者)

23

ディテールカット

(目や手)

24

カットアウエイ

(別のカットを挟む)

やくざの恋物語の上にカイとスージーのメインの書店を舞台にした恋物語、その間にコンビニの恋物語、そして恋の終わりの刑事の物語を挟んでいる。

25

カットバック

(全く別の状況に交互に切り替える)

 

26

モンタージュ

(裏の人格を見せるなど)

 

27

カラコレ

照明効果が出るようにしている。

音響効果

28

効果音

不動屋さんのオレンジスーツの馬鹿チンピラが悪さをしに現れるとBGMが入る。

空港に向かったカイを見送った後の朝日のシーンはゆったりとしたBGMに。

警察が来て闇販売業者が店をたたんで急いで逃げるシーンはドラムのBGM。

フランス行きを決めてから胡弓の美しい音色がBGMに使用されて明るい気持ちを演出。

刑事が家に帰ると彼女が家出しており、切ない胡弓のBGMで心情演出。。

追跡シーンはギターと胡弓のアップテンポBGM。

アクションシーンはドラムのBGM。

29

沈黙

 

30

モンタージュ

(音と音、並列繋ぎ、対比繋ぎ)

 

31

サウンドミックス

(音の重ね方)

32

モチーフ

(同じ音の繰り返し)

カラオケの歌の歌詞内容とやくざの恋物語の内容がつながっている。

チンピラの登場はチンピラのBGMが使われていてまた来たなとよくわかる。

感想

33

 

前掲

swat1枠.jpg

概要

SWATに所属している警察官の活躍を描く。SWATの新チーム結成と訓練をリアルタッチに描写する前半と、麻薬王を救出したら1億ドルの賞金を出すと宣言した麻薬王の護送任務に端を発する大がかりな市街戦が展開される後半からなる。

http://www.youtube.com/watch?v=B0x0FIU-V4c

映画分析感想

SWATの訓練合格のあとの打ち上げシーンで、引き締まった体を披露すると皆がパンツに紙幣を挟んでやる。これはストリップだ。

後半は麻薬王が、俺を逃がしてくれた者には1億ドル出す。に反応したチンピラ達が金欲しさにアレックスを救出に来ることから物語が盛り上がる。この映画のモチーフでキーワード。

SWAT については専門家を入れて武器や服装など実物どおりに撮影しています。ユニホームは実物のままに。映画の世界観は専門家を入れてリアリティを出すべきだと 分かります。素人のインタビューや取材で作品を作るのではなく取り上げた世界の内部の人を参加させるべきですね。

アクションものは台詞ではなくアクション映像で物語を語っていく。

 

監督の作り込みチェックリスト 監督クラーク・ジョンソン

区分

NO

項目

内容

脚本

1

タイトル

SWAT

2

主題

(何についての映画か、問題、主張する思想内容)

SWAT。

3

テーマ、脚本

(主題についての考え方、メッセージ、見解)

正義のSWAT。アクション。

TVドラマシリーズ「特別狙撃隊SWAT」のリメイク。

4

脚本

される後半からなる。

5

場所・時代

アメリカ。2003年

6

季節

7

期間

1か月

8

モチーフ

(反復で表す)

「俺を逃がしてくれた者には1億ドル出す」 と3回言う。それを受けて後3回1億ドルの話題が出る。後半はモチーフが物語を引っ張る。

9

隠喩

(別のもので意味を伝える)

誕生パーティの子供の水鉄砲の戦闘シーンとSWATの戦闘シーン。

ビジュアルデザイン

10

照明

(キーライト、フィルライト、バックライト)

明るい屋上から犯人のいるビル内に入る時、ビルの中は真っ暗で混沌としている演出。

同棲している彼女が家を出て行ったあと、ストリートは失望して目から上に黒い影が落ちている。犯人を追跡するSWATの顔は暗くてもうっすらと顔が見える照明。

線路の戦いのシーンは暗くても顔は見える、蒸気が白く出ていて印象的。命令に背いて行動する二人の顔に影はないのは正義と信じているから。

麻薬王のアレックスが車に乗っていて警官に職務質問を受けるシーン、指名手配されていて後ろめたいので顔が半分影に。

11

色使い

(コントラスト、配色)

この監督は火花の美しさが好き。ビルに侵入してドアを焼き切るバナーから火花が飛ぶ。

飛行機内の訓練でもドアを開けるのにバーナーで火花が散る。暗い画面に火の粉は美しい。工場のシーンも火花が散っている。雨水の下水管のシーンは暗いが懐中電灯を使って上手く顔を見せている。

 

12

主役の色

(どのように目立たせているか)

麻薬王のアレックスはオレンジ色の囚人服で、黒いSWAT とは対照的でよく目立つ。

主役のストーリーの腕の入れ墨。

13

カラー白黒

カラーのみ。トンネル内はモノクロ状態。

撮影

14

フレーム

(スタンダードサイズ、ワイドスクリーン、シネスコープ)

海の波のシーンが美しい。その砂浜をストリートが走っている。狙撃手のクローズアップ、撃たれるクローズアップ、そしてまた狙撃手のクローズアップで印象付け。

双眼鏡の外のレンズに犯人の姿が映っている。

橋へのジェット機の着陸時、ギャンブルの両目の超クローズアップとジェット機の機体の超クローズアップで印象づけしている。

15

配置

SWAT訓練前に集合したシーンは全員ばらばらの5列に座っており、気持ちがバラバラを演出。

16

オフスクリーン

(スクリーンの外を描く)

戦闘シーンは全景見せた後オフスクリーンを音で表現。

17

カメラワーク

(ロング、フル、ミディアム、ウエスト、クローズアップ、超クローズアップ)

冒頭、市街戦の場所にSWATの大型トラックが来るシーン画面いっぱいに存在感を演出。

街の空撮はクローズアップ、ミディアム、ロングと入る。倉庫係のショットは背景に武器の棚を配置して場所の説明。

君がSWATに欲しいというシーンは隊長が大きくストーリーは小さい映像で力関係を演出。

この監督は画面に映る人の力関係を画面の専有面積で表現。

戦闘シーンの橋を切り替えが早い1秒のパンでアングル変更してスピード感と緊張感を出している。

飛行機の着陸成功時ギャンブルとアレックスの顔が勝ち誇ったようなクローズアップで切り替わる。

SWAT訓練シーンは被写界深度くしている。

18

アングル

天井裏のSWATの顔は網目を通して撮影、犯人が見えていない不安感を演出。

警部に人質の女性を撃ったことをとがめられるシーン。ストリートとギャンブルの顔は半分影に。隠し事をしている演出。

ラストのハイウエイはZ軸が伸びていて奥行きのある素晴らしい風景になっている。

パトカー、狙撃班、本部、人質、犯人、取り巻きの警官、侵入するSWATのカットバックを2回繰り返して緊張感演出。手持ち撮影、アングルの工夫。

ハレルソン隊長とストリートの初対面は金網越しの面会で気持ちがつながっていないことを演出。

割れたガラス越しの隊長カットは割れ目をぼかして次第に隊長の顔にピント。印象的。

ギャンブルが居酒屋でストーリーとの2ショットの写真のガラスを割って怒りを演出。

地上の戦闘シーンから地価のシーンの切り替えがカメラの移動で行っている。エレベーターからのアングルのようで印象的。トンネルの中でZ軸のアングルでトンネルに奥行きを与えている。

 

19

主観ショット

(本人目線)車の運転中はドライバーの主観目線。

戦闘シーンで敵をうかがう時。犯人が警察をうかがう時。

20

スローモーション

 

編集

21

スーパーインポーズ

(別の映像を重ねる)

ヘリの墜落シーンはCG合成。

22

リアクションシカット

(加害者、被害者)

アレックスが叔父を殺害するシーン。

23

ディテールカット

(目や手)

爆弾のピンを抜くシーン。狙撃手の目。

24

カットアウエイ

(別のカットを挟む)

戦闘シーンでへつの戦闘シーンを次々に挟んで切り替えて緊張感を演出。

25

カットバック

(全く別の状況に交互に切り替える)

SWATがビルに侵入する映像、司令部の映像、人質と犯人の映像がカットバックで繰り返して緊張感を演出。同じ時間/違う場所。

狙撃班と侵入班のカットバックで緊張感演出。

26

モンタージュ

(裏の人格を見せるなど)

空港でナイフをとがめられてこれは危険ではないというが、後でそのナイフで叔父を殺害する。

27

カラコレ

夜の戦闘場面は黄色のカラコレで表現。

音響効果

28

効果音

冒頭、真っ暗の画面で警察無線の声からスタートする。

海岸の波のシーンは美しくBGMがしっかり入る。

犯人追跡のシーンはアップテンポのラップ音楽をBGMに。SWATの訓練シーンロックのアップテンポBGMでリズムよく。

犯人の建物に侵入する時は静かなBGM。

29

沈黙

海岸のシーン。

30

モンタージュ

(音と音、並列繋ぎ、対比繋ぎ)

犯人との銃撃戦

31

サウンドミックス

(音の重ね方)

32

モチーフ

(同じ音の繰り返し)

感想

33

 

前掲

陪審員枠.jpg

今回から映画制作の立場から脚本、ビジュアルデザイン、撮影、編集、音響効果の技術的な観点から書いています。全てを抽出しているわけではなく、気のついた点だけにならざるを得ないのはお許しください。しかし、監督が作り込んだ芸術性のテクニックを一つでも多く感じられるなら、それは監督の期待に沿うものであると思います。ただ見るだけの映画から監督の芸術性を味わう映画鑑賞になることを期待します。

概要

マフィアのドンとその孫が殺されファミリーのボス、ボファーノが逮捕されて裁判に。裁判の陪審員に選ばれた女性彫刻家アニーのもとに、マークと名乗る二枚目の男が来る。作品を買ってくれて紳士的な態度に気を許すが、自宅に招待したとき男の態度は一変する。裁判で「無罪に投票しないと息子の命はない」、彼はボファーノに雇われたプロの殺し屋。息子の命を守るため嘘の証言で無罪を勝ち取る女性の殺し屋との戦い。

映画分析感想

裁判員裁判の裁判員6人は脅されることはないのでしょうか。職業裁判官3名が入るので、コントロールはしにくい工夫がなされていて安心できます。

殺し屋は主人公の家に入り、写真や電話番号、メモなどをスキャナーでをコピーしていきます。多くの情報を収集して相手をコントロールしようとします。

ランチのシーンは画面の3/4に被写体がありますが、脅迫されるシーンでは1/4くらいに狭まり心が狭く感じていることが演出されています。影や画面の専有面積を通してキャストの心情を表現しています。

検察官の女性の目つきは本物以上に突き刺さる目線でした。

影を使った心情表現、カメラアングルによる立場の演出。主観ショット、スローモーションなど映画のテクニックを駆使した演出でキャストの心情がよくわかりました。

この映画ではマフィアに雇われた殺し屋に、子どもの命の安全と引きかえに陪審員全員を「無罪」に誘導するよう迫られます。主人公は陪審員の評決を「無罪」に誘導します。殺し屋は彼女の親友も自殺に見せかけて殺して主人公をけん制します。

後半はサスペンスが増して、マフィアの殺し合いはどんでん返しで殺し屋が生き残ります。
結論は陪審員は自分の身は自分で守るしかないと言っています。それこそ命がけで戦う以外に方法はないと。

 

監督の作り込みチェックリスト(監督ブライアン・ギブソン)

区分

NO

項目

内容

脚本

1

タイトル

陪審員

2

主題

(何についての映画か、問題、主張する思想内容)

陪審員制度

3

テーマ

(主題についての考え方、メッセージ、見解)

陪審員は自分の身は自分で守るしかない。サスペンス

4

場所

アメリカ N.Y.郊外からメキシコのインディオ村

5

時代

現代

6

季節

 

7

期間

一ヶ月間程度

8

モチーフ

(反復で表す)

操り人形 (殺し屋が作る、法廷で2度見せる)

9

隠喩

(別のもので意味を伝える)

最後に首をくくられて火をつけられる死神

ビジュアルデザイン

10

照明

(キーライト、フィルライト、バックライト)

冒頭、法廷の壁画を黒い影が覆い裁判の公平さに影が落ちることを暗示。殺し屋が主人公の家に侵入する時は人影が侵入。家の中でも顔は影になって見えない。嘘を言うシーン、相手をだますシーンは全て顔に影を置いている。家に侵入したマフィアの顔は黒いシルエットで顔は見せない。ランチの時男は顔に影がついたまま、嘘をついている演出。

主人公はいつも明るい顔で真実のみを話している演出。夜の車の中の二人の顔に照明が当たって明るい。実際は車内は暗いはず。その訳は初めてのデートシーンだから?二人とも黒い服装で顔だけが美しく浮かび上がる。主人公の背景のぼけた蝋燭の光に色がつけてある。子供と友人の車内シーンも顔だけ明るいから監督の撮影指示かも?

家の中のツーショット、蝋燭の火を灯してカメラ側に主人公を配置してバックライト状態に演出。殺し屋はバックライトにならない配置に立つ。

初めて正体をばらす時、男の横には箱があり、男が話している間、顔の横の箱に黒い影が映る。黒い人格が隠れていることを演出。マフィアの男にはいつも顔に影が付きまとっている。

そして男の顔の影が消えた時、主人公に危険が迫っていることを演出。主人公が子供の命が危なくなると脅される時、主人公の顔は右端に1/4しか見えず、3/4は男の黒い背中が手前に映ることで主人公の不安感、心が狭くなっていることを演出。

立場の強弱を映像の面積対比で表現。

何も知らない子供と友人の医師はいつも顔に影がない。

法廷では主人公に関係しない人の顔には影がなく、関係者だけ顔に影を置いて不安感を演出。

11

色使い

(コントラスト、配色)家の写真は白黒なのに殺し屋がスキャナーで読み取るとカラーに変わる。どういう意味の演出なんだろう。情報を盗まれて減るはずのものが色を増やすとは逆対比なのか。多分監督は情報を盗まれているという印象を観客に残したいのだ。オヤッと思うから。

盗聴室はモノクロの世界、人の顔だけ肌色。

グアテマラの祭のカラーはカラフル、クライマックスへとつながる。

12

主役の色

(どのように目立たせているか)

コントラスト、黒い服装。

13

カラー白黒

カラー作品だが、盗聴室はモノクロ。雨の背景が美しい。

撮影

14

フレーム

(スタンダードサイズ、ワイドスクリーン、シネスコープ)シネスコープサイズ。

15

配置

陪審員が議論するシーンは5列で混沌として意見がまとまらない様子を人の配置で表現している。

16

オフスクリーン

(スクリーンの外を描く)

殺人犯が迫ってくるシーンに恐怖でわめく子供の声を入れている。主人公の映像に対して裁判官は声だけ聴こえてくる。

レストランのランチシーンでカウンターの一般客を映しながら二人の会話の声を入れて、カメラはパンして二人を映す。主人公をアップでとらえて周りで陪審員が協議する声を入れている。

17

カメラワーク

(ロング、フル、ミディアム、ウエスト、クローズアップ、超クローズアップ)

子供を殺した後犯人の両目を超クローズアップして緊張感演出。法廷は主人公、裁判官と映して、それから法廷の引きアングル、傍聴人のうちキャストの身をアップ、全体を理解できるようにしている。

裁判官を左、陪審員候補を右に配置して主役を重要視している。

2階にマフィアがいるのに主人公が2階に上がると緊張感が生まれる。マフィアは別の階段を下りてくる。

マフィアが盗聴開始のシーン、口元を超クローズアップしてにやりとした表情を映す。マフィアが無罪に誘導しろと脅迫するシーンは金網越しの映像で違法行為を演出。そして男の強い口調が両目の超クローズアップで主人公に強要していると演出。

18

アングル

法廷の全景ショットは後で入る。どうして冒頭に入れなかったのか。説明スタイルではなく、先ずシーンの主題を映して、関係者をアップ、そして全景映像に。重要なものから並べてある。町のロングショットから引きながら車をとらえて、主人公が運転している社内映像に。そして自宅に付くと子供が登場。マフィアが追跡してくる。緊張感が生まれる。車の中で裁判の話をするときはフロントガラス越しで不安定感の演出。

男が主人公の作品を破格の1万2千ドルで購入した直後、男は仰角、主人公は見下ろしカットで力関係を表現。子供が二階からマフィアの男を見る時、二階の手すりの三角形の間からマフィアを映して子供の疑心暗鬼を演出。母親が電話をかけるシーンもカメラは三角形の手すりの隙間から主人公を小さく映して不安定感、心が小さくなっていることを演出。盗聴している部屋は金網越しに映していて違法行為を演出。法廷では主人公は脅されて無罪派のため小さくなっている。傍聴席のマフィアから見えないように板の影に隠れている姿で心情演出。その時証言者と主人公が交互にカットバック。採石場で殺人が行われた後のがけ下からのワイド仰角ショットで人が左上に小さく映り、なすすべのない心情を演出。主人公は無罪に投票するが、髪を触って心情が評決にない、うわの空を演出。

道路の高架の下でマフィアのボスと会うシーン。アングルがZ方向に奥行きを出している。

警察が当てにならないので自分で戦うと決心した時の背景は太い松の木が立ち太い決意補演出。

マフィアは主人公に言いよるシーンで主人公は斜めのアングルで男と向き合わない演出。殺し屋を誘い出しに来た男は嘘を言っているため顔の中央に影の演出。殺し屋が呼び出されたシーンは円形にニューヨークのビル群、手前には海、近くには大きな橋がかかり絶景、ここでリムジンを爆破して見せ場を作ります。殺し屋は主人公に脅しの電話をしますが、その時の目には影があります。電話を切った後、死体にパン。

車を奪う時はダッシュボードの血のりを拭いて殺人を暗示。

19

主観ショット

(本人目線)

殺される子供が犯人を見るシーン。法廷シーン。後列の人の肩越しの主観ショット。前の人が振り返った時の主観ショット。盗聴者の主観目線。

 

20

スローモーション

子供が殺人者から逃げるシーンがスローモーションで緊張感を高めます。おびえる少年から犯人のピストルにスローでパン、緊張感演出、BGMもサスペンス用。

編集

21

スーパーインポーズ

(別の映像を重ねる)

22

リアクションシカット

(加害者、被害者)

逃げる少年と殺人犯のリアクションカット。

23

ディテールカット

(目や手)

24

カットアウエイ

(別のカットを挟む)

25

カットバック

(全く別の状況に交互に切り替える)

主人公が別の家で子供と会話しているシーンと殺し屋が自宅に盗聴器を仕掛けるシーンがカットバック。

 

26

モンタージュ

(裏の人格を見せるなど) 殺し屋の横の木箱に黒い影を落として二重人格で嘘を言っていることを演出。

27

カラコレ

盗聴室のモノクロ、

音響効果

28

効果音

サスペンス風

29

沈黙

台詞よりも照明で演出している。

30

モンタージュ

(音と音、並列繋ぎ、対比繋ぎ)

 

31

サウンドミックス

(音の重ね方)

 

32

モチーフ

(同じ音の繰り返し)

感想

33

 

前掲

最高の人生の見つけ方1枠.jpgジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマン主演で描く、死を意識した初老男性2人の希望に満ちた余生を描く人間讃歌。病室で知り合った2人が意気投合し、“やりたいことリスト”に基づき、残りの人生を生き生きと駆け抜ける。感動ストーリーをさわやかなユーモアで描き切ったのは、『スタンド・バイ・ミー』の名匠ロブ・ライナー。いぶし銀の演技を見せる2人の名優の友情とすがすがしい笑顔に、思わずほろっとさせられる。(yahoo映画)

 

ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマン。アカデミー賞ノミネート俳優の共演。余命6カ月にして自らの人生に真正面から向き合うことを決意して旅に出る二人の男の姿を通して、生きることの意味を考えさせます。

愛する妻と家族に囲まれ幸せに生きてきた自動車整備工のカーター(モーガン・フリーマン)。クイズ番組が好きで全部答えを言えるほど記憶力が良く沈着冷静だが、ごく普通の男です。健康診断を受けて結果を電話で聞いた時、病名を聞いて煙草を落とします。大きなショックの演出です。

そしてもう1人は、実力で欲しい物すべてを手に入れてきた実業家のエドワード(ジャック・ニコルソン)。妻も家族も孫も、心を許せる友人もいないが、金と美味しいコーヒーさえあれば満足する自分勝手な人間です。ところが、二人は偶然同じ病室になったことが原因で「死ぬまでにやりたいこと」を書いたリストを作成。そして金に糸目を付けずに全部実現していくことになります。

病室は照明が強くて大変明るくなっています。実際はガン病棟はもう少し暗いと思いますけど。

二人の旅はスカイダイビングから始まり最初で最後の体験”を求めてアフリカ大陸からインド、香港へ。プライベートジェットの中の映像は環境音が入っていません。ジェット機の音が何も聞えません。どうして? 小型のジェット機の室内は相当うるさいと思いますけど。何故音を消しているのでしょう?監督の意向ですね。

アフリカのジープに乗って二人がアカペラで歌うのですが、カットが変わるとその歌がBGMに切り替わります。いいですね。

その旅の中で二人は神について、家族について、生きることの意義とは、幸せとは、そして「自分」とはどういう存在なのかという人生最大の難問に向き合い、答えを探していきます。

 名優二人が演じるキャラクターはコミカルなやり取りが自然で面白い。自己中心主義のエドワードをジャック・ニコルソンはとてつもなくチャーミングに好演。そして思いやりがあり良き父であり夫であるカーターを、モーガン・フリーマンは演じます。テレビのクイズ問題を条件反射のように答え続けるカーターの姿から、本当の自分が別のところにいると思わせます。

性格も人生観も異なる二人が親友になっていく姿を描いています。親友の存在こそが人生で最も大切な宝物なのだろうと感じられます。

演出面でも2人が長い時間を過ごすことになる病室で分けています。エドワードが病室に持ち込んだのは高級コーヒーメーカーと、自分の秘書だけ。そして、カーターのベッドサイドには家族の写真や孫たちが描いたお絵かき等の家族愛でであふれています。病室の壁を見ただけで2人の人生がひと目でわかるという演出です。

二人は残された時間でアフリカの大自然やエジプトのピラミッドの頂上、タージ・マハルに万里の長城などの世界遺産をめぐります。人生を楽しむためにの行動は年齢も立場も関係ないと思わせてくれます。

問題は観客がこの映画を見てどのように自分の人生を最高にするかですね。映画のように親友を持つということが第一ですね。それにしても親友のために女性を手当てしてくれるなんて最高の友達ではありませんか。

バーで有った女性が、ヒマラヤの話で意気投合して、その後、初めて言うわ、月並みだけど、部屋とって有るの。と言って誘います。

それは、つまり・・・そういう、嬉しいよ。

だが私はいい。と断ります。

女性は幸せな奥様といいます。

いや、私が幸せなんだといいます。

確かに余命半年の老人に女性が声をかけてくると言うのはおかしいですけど。

その後友達に余計な気を遣わせたなと言います。。女性は雇われていたということが分かります。

そして、じじいの三カ条。

トイレは頻繁に

勃つうちに使え

屁は止められん

切実感が出ている台詞ですね。

最高の人生についてですが、学生の場合はとにかく卒業して社会に出ること。サラリーマンの場合はとにかく家族を養っていくこと。多分それしか考えられないと思います。生活費を稼いでからしか自分の事など考えられないですから。

そして、定年退職した人の場合ですね。時間がありますから生活できる資金だけあれば後は自由なはずです。しかし、現実は厳しくて社会制度として65歳まで働けとか、なかなか自由にしてくれないのが現実だと思います。年金の資金が不足するからと言って65歳まで働かせてその間は年金支給をカットするという制度は年金制度の維持には効果があるかもしれませんが、個人の人生を65歳まで首に縄を付けて縛っているとも言えます。サラリーマン人生は悪くは有りませんが、会社に縛られた自由のない期間になります。そして体力が衰えてから自由にしてもらって何ができるでしょうか。

尤も個人の選択の余地がありますから、年齢に関係なく独立も可能ですが、やはり定年までは、あるいはその直前までは会社に行く方が収入は安定しますね。たとえ年収が下がってもそれだけの収入を自営業で稼ぐのは数倍大変ですから。

最高の人生というものは所詮本人の評価、自己満足で感じるものですから、自分でじっくり考える以外に方法はないでしょうね。他人がいくらほめた人生で有っても自分が納得していなければ意味はありません。恐らく最高の人生とは本人の歩んできた人生への満足感と、子孫や家族に何かを残せること、社会の役に立ったこと、そして家族に迷惑をかけないでぽっくり逝くことかもしれません。

多分大切なことは人の人生と比較しない。

自分の描いた人生を歩めたかどうかを評価することになると思います。

いずれにしても自分の余命60年間を世のため人のために使いたいものです。

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