「ラマン 愛人」監督: ジャン=ジャック・アノー キャスト ジェーン・マーチ  レオン・カーフェイ FFビデオ制作

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15歳の少女と中国人青年の愛人関係を描く、マルグリット・デュラス原作の自伝的ベストセラー小説の映画化。監督は「子熊物語」のジャン・ジャック・アノー、製作は同作のクロード・ベリ、脚本はアノーとやはり「子熊物語」のジェラール・ブラッシュの共同、撮影はロベール・フレス、音楽は「カミーユ・クローデル」のガブリエル・ヤーレが担当。<Movie Wolker>

「ラ・マン」は男性名詞で、「愛人」というのは、ジェーン・マーチではなく、レオン・カーフェイ演じる男の方ですね。

この映画は傑作だと思います。それは恋愛をきちんと描いているからです。監督がこのように描けるのは経験があるのでしょう。身も心も離れられなくなったという経験が。素晴らしい本物を知っている監督ですね。

冒頭、マクロレンズの映像から入ります。いいですね。初めにキャストの人物像と環境を描いてから物語に入ります。

私は5回くらい見ていますが、始めてみた時、上記の写真にあるように車中で手のひらを重ねるシーンに感動しました。次第に近付く指と次第にからまる指、そして二人の表情が実にリアルに演出されていました。知らん顔して指を絡ませる。女も知らない顔しているが目をつむり口をわずかに開きます。受け入れていますね。

走る車のアングルもいいです。男の手は最後は太ももにあり寄宿舎につきます。霞む車窓。寄宿舎に行く前に女は車に戻りガラス越しにキスをします。何と素敵なアングル。二人の間にはガラス一枚しかないのです。寄宿舎では蚊帳の中に寝ます。虫の多いことが演出されています。

愛の巣には合計7回行きます。

最初は愛の巣で彼女の方から男を誘います。それは多分年ごろの女性の好奇心から。寄宿舎で男の話をしていましたから。しかし、男はあなたは幼すぎるから抱けないと言います。すると少女が男の服を脱がしていきます。そして未知という黄金を愛撫。ベッドの上の男の後ろ姿が美しく撮られています。彼は親の財産で働く気力を無くしていて、やっている事は女を愛する事だけというセリフ。

愛の巣は中華街シヨロンの喧騒が鎧戸から入ってきます。路を歩く人の影が透けてみえます。そんな愛の巣。何という素晴らしい演出。

2回目に会うときは愛し合う二人を見事に描いています。演出とアングルが素晴らしいと思います。この時点で身も心も一体だとわかります。ラストまで見通せます。離れられない仲になっていると。これこそ男と女の愛の描写ですね。

3回目は彼は鉢植えに水をやります。まるで自分に水を与えるように。毎日この部屋で会おうと言います。艶めかしいアングルがいい。マクロレンズも使っています。

次は家族を連れての食事。

4回目はしんみり入ります。男の影で少女の顔が隠れます。家族との食事会で深く傷ついた男の気持ちを演出。

そして母親が寄宿舎に娘の外泊を頼みに行きます。自由にさせないと飛び出してしまうからと。そして自由に会えることになります。

彼女との結婚を親に反対されて、私は父の財産で生きているから逆らえないと。

海辺で風が冷たくなり彼女に上着をかけてやります。完全に愛し合っている事が演出されています。

5回目は愛し合った後ワインを飲んでいます。もう一度言ってほしい「お金をくれるからここにきてのだと」と頼みます。そして君に出会って初めて苦悩を知ったと言います。もう抱けない、君が僕を愛していないから。と言いますが、彼は涙を流します。

乱暴者でヘロイン中毒の兄をフランスに返す時、家族の心情が見事に描かれています。

6回目はもう来ないかと思ったと言い、アヘンを吸います。未練が残って辛い、君に恋焦がれて死にそうだといいます。すると彼女は結婚後もう一度ここで会いましょうと言います。そして彼の結婚式を見ます。

母親が彼は恩人だと言います。ヘロイン中毒の兄の借金も払ってくれたし、渡航費用も出してくれたと言います。

7回目愛の巣はもう引き払われていてベッドのシーツもありません。彼が来ないことを暗示します。彼女は植木鉢に水をやります。待てども来ないので一人人力車で戻っていきます。人力車の下にぶら下げたぽつりとした赤いランプが彼女の心情を表しています。

そして彼女はフランスに帰ります。彼が見送りにきている。打ちのめされて身じろぎできず。彼が見つめているのを知る。この船では彼と初めて会った時と同じポーズをとります。陸も地平線に消えた後、ショパンのワルツが聞こえてきます。ピアノが船内に響いて彼女は「あの人を愛していたかもしれない」と言います。今やっと愛を見出したと、白い歯と涙目だけのアップ。ワルツをトリガーにして心情を描くなんて素敵ですね。

そして数十年後、彼女が作家になってから彼から電話があります。「昔と同じようにあなたを愛していると」そして死ぬまで愛し続けると。

そう、これが本当の恋愛映画ですね。2回目の愛の巣のシーン以降ラストまで二人は身も心も愛し合っていたのです。ラストで男性は生涯愛し続けると言いますが、女性はどうでしょう。当然同じだという演出ですね。究極の恋愛映画だと思います。この演出皆さんはどう思われますか。私は最高だと思います。身も心も一体で二人が離れられない映画はいろいろありますが、この映画と比べて如何でしょうか。

私は一目見た時にこの映画に感動しました。きっとわかる方はお分かりになると思います。これが恋愛の味わいで大変素晴らしいと思います。

恋愛と結婚は当然違ってきます。恋愛はsexを目的にしたもので身も心も一体になることだと定義しています。結婚は子孫を残すことが第一目的で、二人で助け合って生きていくことが第二目的。

ですから子供を作るときは恋愛の部分も必要ですが、そのあとは生活力、包容力と信頼関係になると思います。優秀な監督が深く耕した映画を深読みすることで人生を味わう綾模様が見えてくると思います。

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