経済大国アメリカに対して、映画という手段を使って警鐘を鳴らし続けているアメリカ人監督、マイケル・ムーアが映画『キャピタリズム マネーは踊る』のプロモーションのため初来日を果たした。ニュースでは決して見ることができない、資本主義国家に生きるアメリカ国民の悲惨な現状、そして金持ちのみが富を増やしていくウォール街の真実を、得意のアポなし取材で赤裸々に描いたマイケル監督。自らが生まれ育ったアメリカへの思い、最も過激な反戦家マイケル・ムーア。(yahoo映画)
この映画は自主製作映画の劇場公開版ですね。監督が自在に自分の主張のままに制作した作品ですから。でもこのような作品はほかにないですからヒットしますね。
『キャピタリズム』は、住宅ローンが払えなくなって家を強制退去させられる人々を映し出すします。
日本でも住宅着工というのは国税にとって最も重要な収入源のひとつ、住宅関連企業にとっても大切な売り上げ、不動産業界も、家電業界も同様、つまりその国の経済をけん引しているのが住宅購入なのです。購入するには銀行でローンを組みますから銀行ももうかります。それを推進するのは住宅減税制度ですね。つまり政府が推進の旗振りをしています。そして住宅ローンが原因の自己破産が年間2万件を超えますから、わが国もアメリカ同様の傾向がみられると思います。つまり資本主義ですね。
今のアメリカ庶民は、銀行の金利がタダ同然なので老後の蓄えを401Kの投資信託に入れたが、それも株価暴落と共に消えました。
老後の蓄えの投資は危険と言われています。もともと投資の中身は博打なのですから。勝ったり負けたりするのが自然なのです。問題は投資はプロと同じ土俵で相撲を取りますから負けても何も不思議ではないのです。そこを勝てそうに宣伝するのが商売ですね。多くの人が定期預金にしておけば莫大な資金が残っていたはずといわれるのはそういう理由からです。私も博打のお仲間ですね。腹いっぱい痛い目に会ってあってやっと元本保証の素晴らしさが分かるなんて遅すぎます。しかし、それが多くのサラリーマンの現実でしょうね。いまだに負けを知らない人がいたらあなたたはプロですね。
民間の保険会社は医療費支払を拒否するので、病気になると破産。日本は医療保険制度がありますから本当にありがたいですね。
サブプライムローンで家を失う。これは日本も変わらないと思います。終身雇用が崩壊しつつある中で、住宅減税に誘われて無理なローンを組めば同じ結果になります。
子ども1人を高校を卒業させるまでにかかるお金は平均2000万円、大学4年間にかかる費用1000万円。
これは日本ではそんなにかかりませんね。有難いことです。
ムーアは現在のアメリカのすさまじい搾取社会の実態を見せていきます。なかでも驚くのは、大企業が従業員に無断で生命保険をかけ、受取人になっているという事実。ウォルマートで働いていた妻が亡くなって3人の子供を抱えた夫が、妻の生命保険で会社が800万円もの保険金を受けていたことを知って呆然とする。
確かに日本の会社も就業規則で現職死亡については一時金を支払うと定めている場合があり、そのために社員に死亡保険をかけていますが私が知っている会社は全額遺族に支払っていました。日本ではこれが普通ではないでしょうか。
普通なら、これはアメリカの資本主義の運営に問題があると考えるますが、ムーアは資本主義そのものが問題なのだと訴え始めます。
これは難しい問題で、私は資本主義の運用の問題と考えますね。資本主義が現在の生活を支えていることも事実ですから、ローン返済は年収の2割以内を守るとか、健康保険には入るとか、学資保険はきちんと掛けることで、資本主義経済の中でもそれなりに安定して生活していけると思います。問題はこれらの事を守らないことにあるかもしれません。生活する上での基本的な前提条件を守らない人は辛い結果になりますね。それが資本主義社会ですから。ただ、人間の欲望は無限ですから、ローンを組む時に住宅減税があるから大丈夫などという言葉巧みな口車に乗せられたり、今は健康だから健康保険は必要ないとか、先の事だからと学資保険をかけていないとか。人によって事情が違いますから一概には言えないかもしれません。
資本主義は経済システムで、民主主義は政治システム。ジャンルが違います。それに歴史的に資本主義の発展が庶民に経済的力を与え、それが民主主義を生んだので対立する概念ではありません。
アメリカ憲法で保障された「幸福の追求」。ルーズベルトが掲げた権利は以下の通りです。
社会に貢献し、正当な報酬を得られる仕事を持つ権利
充分な食事、衣料、休暇を得る権利
農家が農業で適正に暮らせる権利 (日本にもありませんね)
大手、中小を問わず、ビジネスにおいて不公平な競争や独占の妨害を受けない権利
すべての世帯が適正な家を持てる権利
適正な医療を受け、健康に暮らせる権利
老齢、病気、事故、失業による経済的な危機から守られる権利
良い教育を受ける権利
この演説の後すぐにローズベルトは亡くなり、この権利章典は法制化されませんでした。ムーアはこれを実現するのがアメリカの使命だと訴えます。
ただ、アメリカは実際、これを実現しようとしていて60年代まで続いたニューディール政策のアメリカは国民の平等を第一とする福祉国家でした。ジョンソン大統領は「偉大なる社会」をスローガンに掲げて貧困の根絶を目指していました。世界中があこがれたアメリカン・ドリーム、誰もが豊かになれるアメリカは社会主義的な理想ででした。 ところが、それは経済の停滞を生み70年代にニューディール政策は崩壊。だから、平等よりも競争によって経済を活性化させる新自由主義とレーガン政権が登場したといいます。
ムーアはローマン・カソリックの神父たちに質問します。 クリスチャンとして、資本主義をどう思いますか?
キリストの言葉や行動は、弱肉強食の自由市場主義とは相反するものばかり。 「資本主義は邪悪であり、神の教えに反している」
ムーアはその言葉にただ従います。プロテスタントが「労働によって富を蓄えることは神への道だ」と説いて価値観を逆転させたことから現在の資本主義が発展しています。アメリカの人口の3割を占めるキリスト教福音派もまたプロテスタントであり自由市場主義です。庶民の生活を救う公的医療保険に対しても、「政府による福祉は社会主義だ」「貧乏人のために税金を使うな」と頑固に反対しているといいます。
銃の保有についても日本の刀狩りのように銃狩りを行って全部取り上げればいいものを、それができないアメリカは病んでいるのかもしれません。
この辺が日本とは異なります。日本は資本主義と社会主義のいいとこどりのミックス型でしょうか。
ムーアはアカではなく、素朴なキリスト信者なのかもしれません。
それにしてもここまで政府と金融機関を批判するなんて、そして暗殺されないなんてアメリカの報道の自由の凄さを感じます。
普通の人にはこのような戦いは無理ですね。日本の官僚に突撃気取材する監督はいつ現れるのでしょうか。
だいたい官僚が企画することは国税収入をいかに増やして日本の国を栄えさせるかですから、国民を多少踊らせないと景気が盛り上がりませんし、そこには詐欺まがいや利権が発生したり、我田引水があったりすると思いますが、国税を増やす目的は誤ってはいませんので、一概に反対ということも言えないと思います。つまり、国税収入にあまり反映しないのに国民に害を与えている政策でしょうか。探さないとなかなか見つからないような気がします。何事にも二面性はありますから追及できないことはないにしても、やはり明確な正義がないと脚本を書きにくいと思います。
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