「息子」 監督 山田洋次 キャスト三國連太郎 永瀬正敏 和久井映見 FFビデオ制作

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息子1枠.jpg「男はつらいよ」の山田洋次監督が、椎名誠の『倉庫作業員』を基に、田舎に住む父親と都会でフリーアルバイターを続ける息子との葛藤を描いた感動ドラマ。
 東京でフリーアルバイターとして生活を送る哲夫。母の一周忌に岩手の田舎に帰るが、フラフラした生活に不満を持つ父・昭男とはギクシャクしたままだった。東京へ戻った哲夫は、下町の鉄工場で働き始める。そこで取引先の倉庫で働く征子と出会う。やがて、哲夫は征子が聾唖であることを知る(yhoo映画)

都内の居酒屋から始まります。そして岩手県に、山、川の景色、バスが走り抜けます。セミの声は環境音として別に入れてあります。生録のセミの声は大きすぎますから。日本の田舎が自然味たっぷりと描かれています。何とも言えない穏やかな田舎の空気感が見事に出ていますね。

照明も明るく母親の一周忌に集まった兄弟たちの明るい家族だんらんにしています。

残された父親の面倒をだれが見るのかと揉めます。長男が引き取るしかないのですが、「あーあ長男の嫁になんかなるんじゃなかった」というセリフ。よくわかりますね。長男はたびたび聞かされているようです。

父親が息子に仕事の話をしていて「大事なのは長続きすること」といいます。親が子供に求めることですね。とにかく生活を安定させろと言う意味ですね。

息子は車の助手席で客先の女性の事を考えていますが、フラッシュバックで彼女の仕事をしている姿の映像が入ります。映像で文章を書いているかのようです。

父親が息子に仕事はどうしているのかと聞くと「今度は金属関係のかたい会社だ」といいます。金属と堅いをかけていて、かつ父親を安心させる堅い会社の意味ですね。何処の親も子供は堅い会社で安定した生活ができるように望みますから。

息子は車の中で彼女との将来の姿を思い浮かべます。フラッシュバック映像です。

そのあと彼女は大層美人だが耳が聞こえない聾唖だと聞かされます。しかし息子はそれがなんだと愛を手放しません。

父親と子供たちの関係は多少ぎくしゃくするものの、ほのぼのとした親子の会話で親子の関係が冷めていないことを伝えます。

長男の嫁がお父さんこれからどうしますかと聞くと、死ぬまで岩手の家にいて、母ちゃんの墓に入ると言います。これはなんかわかる台詞ですね。何処の親も子供の世話になって足を引っ張りたくないから離れて住みたいと言います。本当は息子たちが親のもとに来て一緒に住んでほしいのですが、過疎が進んでしまってそうもいきません。農家は親が死ぬまで住んで家を締める。世の中の流れなんだと言うセリフもあります。内容が現実的ですね。地方の農家は多くが当てはまる世の流れだと思います。

今回はお前の家を見に来ただけだと言います。マンションのあんな狭い家に大きい身体のお父さんは無理よ、せめて庭でもあればと嫁が言います。田舎の父親を住まわす場合狭い庭なんて何の意味もありませんけどね。庭付きの家が欲しかったと言っていますね。実際は一戸建てよりマンションの方がずっと住みやすいことを知らないのですね。地面があると草が生えますから草取りしなければならないですよ。虫も湧くし。

首都圏は寝る所だけあればいいと思います。公園は広いし、遊ぶところもあるし、電車も安いし住み慣れている人ならパラダイスなんですけどね。この辺が田舎に住んでいる両親と都内に住んでいる両親の違いでしょうね。私はハイブリッドライフと称して都内と地方の両方に住んでいますから都内の住み心地の良さも、田舎の人情味あふれた良さも分かりますけど。一番いいのは遠慮しなくていい住まいですね。

兄嫁はお父さんに土産は荷物になるから宅配で送りますと言います。気のきく嫁ですね。

父親は岩手の家が一番気楽でいいと言います。確かにみんなそう言いますね。住み慣れた気楽なところの方がいいと。だから老人たちは住み慣れた家を離れません。確かに田舎暮らしの人が今から都内で友達を作るのも難しいですから。

老人が大量に増えてくる時代ですから、両親と子供たちのあるべき姿を描いてみせる映画も意味があるでしょうね。外部に敵を配置してその葛藤を組みたてて家族が力を合わせるようなストーリーで。最近の子供たちは両親との付き合い方がどうあるべきなのか分からないと思います。別居したままですから。

親の使い走りをしたり、共に笑ったり、料理を作って据膳で食べさせたり、相談したり、泣いたりする生活は気持ちがつながっていることを確認できますからいいものなんですよ。現代は同居に懲りて別居したのはいいのですが、同居の素晴らしさが忘れ去られていますね。別居では決して味わえないものが同居にはあるのですよ。私は血を分けてくれた実の母親と同居していますからよく分かります。

一番末の息子は仕事も安定しておらず、一番父親の心配の種でしたが、二人で銭湯に行くと岩手と同じような会話に、息子に婚約者ができたことを喜んで深夜に起きだしてビールをせがんで、歌まで歌います。親の喜ぶ演出がいいですね。

婚約者との初対面のシーンは窓の外からのアングルで気持ちが不安定なことを演出。和久井映見さんは昔こんなにかわいかったんですね、お嫁さんにしたい女性ピカイチ。

岩手の家に帰ると出稼ぎから帰った時の家族だんらんの映像がフラッシュバック、子供たちが結婚して独り立ちして暮らしているならもう親の仕事は終わりです。私も同じ気持ちですね。子供たちが結婚して独立するまではやはり気にかかります。

親子関係をほのぼのとした空気感であるべき姿を織り込んで作られた素晴らしい映画でした。この映画を子供たちが見たら、親の面倒をどうしてみていくぺきか考えるきっかけになるかもしれません。そして親も自分の始末をどうするのか考えなくてはなりません。

子供たちに面倒をかけないで合法的にぽっくり逝ける方法を描いた映画を作らなくてはなりませんね。私の親父は肺気腫でしたが病院に入院せずに自宅で呼吸が止まって病院で20日間意識が戻らずに亡くなりました。本人が意識した家族に迷惑をかけない死にざまだったと感じています。最後に家族を煩わせない逝き方を教えていってくれたと思います。

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