旧九段会館は、城郭風の塔屋を戴く帝冠様式の外観や、要所に用いられたアール・デコの装飾等、九段下の街路景観の象徴的存在であることが認められ、9月に登録有形文化財に登録されている。
プロジェクトの開発コンセプトは「水辺に咲くレトロモダン」。保存部分の意匠とお濠の自然を活かした新しいオフィスの開発を目指す。
“皇居外苑のお濠に面する”という立地を活かし、新築部分全てのフロアからお濠や皇居外苑の四季を楽しめるよう、お濠側に開放的な窓面の設置を計画。また保存部分の屋上には、ラウンジや庭園も設置する。
地上17階建てのオフィス部分には、お濠に面する基準階約750坪のオフィスフロアを設ける。保存部分は創建時の姿を保存・復元し、内装にも当時の意匠を引き込むことで、有形文化財に登録された保存建築の中で働けるオフィスを提供。
1階には会員制のシェアオフィスを設置し、様々な働き方に対応する。加えて宴会場として活用されていた「真珠」「鳳凰」は、内装も創建時の姿に復元し、一般利用が可能なカンファレンス施設等として活用する。
働き方改革による健康経営のサポートとして、ランニングステーション、仮眠室、食育に寄与する菜園の設置や、各種健康サポートイベントの開催等、入居テナントの「健康経営」に寄与するサービスをビルとして用意する。また、ダイバーシティへの取り組みの一環として、礼拝室やオールジェンダートイレも設置。
セキュリティー面では、最先端のAIカメラ技術による次世代のセキュリティーシステムを実装予定。保存部分では免震構造、新築部分では制震構造を採用。5日分の電力供給が可能な非常用発電機の設置、防災備蓄倉庫の設置等、非常時にも安心安全なオフィスを目指す。
東急不動産のオフィスビルに緑の力を活用する取り組み「Green Work Style」を採用。保存部分の屋上庭園の他、建物北側のメインエントランス前には広場空間を、お濠沿いにはテラスを設置し、オフィスワーカーや九段下エリアを訪れる人々に潤いを与える親水空間を整備する。
施設用途は事務所、店舗、集会場、駐車場等。敷地面積は約8,765m2、延床面積は約67,738m2。地下3階地上17階建て。高さは約74.9m。
戦前に予備役の訓練などに使う「軍人会館」として建設され、戦後は連合国軍総司令部(GHQ)が接収。接収解除後は国が日本遺族会に無償貸与し、ホテルや結婚式場、貸しホールとして運営してきた。
今回の工事の特徴は、古い建物を半分以上残すことです。
今、歴史的な建物の外壁だけを残したままビルを建てる建物が増え、「腰巻きビル」とも呼ばれています。
一方、九段会館は、古い建物の外観に加えて部屋やホール部分を残したままとするのが特徴です。
古い建物から、いわば地上17階のビルが「生える」ようなかたちになるのです。
そしてその2年後、昭和史を刻む舞台となります。
昭和11年の「二・二六事件」です。
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